最強次元師!!
作者/瑚雲 ◆6leuycUnLw

第123次元 縛られ続けた想い
走り去っていったサボコロを、決してレトは追おうとは考えてなかった。
レトは、事実を報告しようとゆっくりとロクの自室へと向かった。
そして、ドアを開けた時、ロクはただ1人悩みを抱えていた。
「……?どう……した?」
「ううん……あたし、サボコロに会ってきていいかな?」
「でも今……俺がちょっと……ね」」
「……?」
「サボコロに、妹がいたらしい」
「……そっか」
「それで俺が言ったんだ『お前は自分の名前を憎んでいるのではないか』って」
「……それで?」
「サボコロ、怒っちゃってさ。お前に俺の気持ちが分かんないって……」
「そ……っか……」
「だから今は会わない方が……」
「いや、あたし会いに行く」
「おいおい……」
「じゃないと……」
「……?」
「サボコロは誤解したまんまだと思うから」
「それどういう……」
レトが言い終わる事なく、ロクは出ていってしまった。
レトは何かあったのではないかと思い、ロクについていった。
サボコロは何処へ消えたのか。
2人は一生懸命探していた。
そして最後に行きついたのは……任務室だった。
サボコロはそこで、機嫌を損ねたように座っていた。
「……やっと見つけた」
「ッ!?……ロク……?」
「ロク……ちゃん?」
「どうしたんです……か?」
「サボコロに、ちょっと言いたくてね」
「……何だ?俺何でも聞くぞ?」
「その笑顔、今すぐ取り消して」
「……ッ!?」
「もう分かってるの。貴方が今まで何に縛られてきたのか」
「……んじゃ言ってみろよ」
ロクとサボコロの言葉により、静まり帰って緊張感を思わせる任務室。
皆がロクの言葉に期待をした。
「……千年前の、ミクシーの事」
「……」
「ミクシー家は千年続いてきた殺し屋の一家。でも貴方は殺しなんて嫌い、違う?」
「……あぁ、そうだ」
「まぁ詳しくは分かんないけど、貴方、妹を剣闘族に殺されたって、言ってたんだよね?」
「……あぁ」
「それで言われたんでしょ……?」
「……?」
「『妹の死を無駄にしたくなければ、ミクシー家の名において、感情を殺せ』と」
「……ッ!?」
「何・・それ……」
「感情を殺せって……どういう意味でしょう?」
「もしその約束を破れば、妹さんの骨だかなんだかを、捨てられるところだったんでしょ?」
「何で……知ってるんだ……?」
「この本だよ」
ロクは、持ってきた本を、ぽんぽんっと叩いた。
さっきまで一生懸命解読していた本だった。
「解読が難しくて大変だったよ……」
「その本……ミクシー……の……」
「そう。最後の頁だけ千年前の言葉で苦労した」
「……どうして読めたんだ?」
「それはあたしが神族だから。これ以外に何か理由でも?」
「……ッ!?……そうだったな」
「貴方、勘違いしてるよね?」
「何を?」
「千年前の殺し屋の一家に縛られて、その家元はもう変えられない。でも両親はずっと縛られてきた」
「……」
「その、殺し屋の一家として恥じぬようにね」
「……だから?」
「貴方の両親は、貴方に間違った事を教えたのよ。殺し屋の一家……って事を」
「間違った……?」
「……ミクシー家の殺し屋の時代は、とっくに千年前に消えてるって事ッ!!」
「……ッ!!?……嘘……だろ……?」
「嘘じゃない……。その証拠に、読んであげようか?この頁の言葉を」
我はレイズ・ミクシー
殺し屋としての長を務めし者なり
千年後、この言葉が誰に渡るかは存知ないが
我子孫に告ぐ
勘違いをさせ、礼を詫びる
許してくれぬとも良し、ただ一言此処に残す
貴公がどれだけミクシーの名を背負っても
貴公は殺人として手を染める者ではない
「な……」
「レイズが死に際に書いた文章だよ。そう、この時代からとっくにミクシーには殺人の血はない」
「そんな……じゃあ……」
「貴方は今までずっと勘違いをしてただけッ!!」
「……んじゃあ俺が今までやってきたのは何だったんだッ!?」
「……ッ!?」
「セピアのために笑う事も許されずに今まで……今まで……ッ!!!」
「そんなに悔しかったら、心から笑ってみせてよッ!!!」
「……ッ!?」
「あたしだって苦しいのッ!!自分が神族だって分かって……笑う事だって苦しいのッ!!」
「ッ!?」
「あんたは人間なんだからこれから先幾らでも笑えるッ!!妹のためでも、あんたは人間なのッ!!」
「……!!」
「あたしは……変えたい」
「……?」
「神族は、人間を滅ぼす存在じゃなくて、人間を護るための存在だって事……証明したいッ!!」
「……ロク……」
「あたしは人間を護る神としてこの世にいたいッ!!!……例え、2度と笑えなくても」
「……」
「貴方がまだ自分の血に縛られるか、それとも自分で道を変えるかは貴方の自由」
「……」
「でも……サボコロは悪い人じゃないから……あたしは信じるからね……?だって……」
「……?」
「笑えなくても、あたし達仲間、じゃない?」
サボコロは、ロクの服を掴んでいたてを、ゆっくり下ろした。
そして、俯きながらも静かに消えていった。
ロクはそのサボコロの後姿を、いつまでも見送るようにしていた。
「……」
「……ロク、よく言ったな」
「え……」
「神族でも、人間を護るために存在する神……か。お前らしくていいじゃん」
「レト……」
「あたしもそう思うっ!!」
「ルイル……」
「あたしとガネストだって……ロクちゃんに救われたもんね?」
「そうでしたね……確か―――――――――」
ガネストは、この任務室で何かを語りだした。
それは、ずっと前の、
ロクが初めてルイル達の前に現れた話。

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