最強次元師!!

作者/瑚雲 ◆6leuycUnLw



第131次元 冷たき瞳の言葉Ⅰ



 長い廊下に驚き、
 広い食堂に目を輝かせ、
 副班長達に憧れを持つ。

 そんな義兄妹が、この蛇梅隊に入隊した。
 そう、ロクとレトが入隊してから3週間ほど経った時の事。
 見慣れない生活にも落ち着きを感じた日々。
 実は、ロクやレト以外に、同じ次期に入ってきた少年がいた。

 「ラミアは本当に優秀なのね~」
 「……別に」 
 「だってこの間、大きな元魔を2体も……」
 「……」

 ラミアはうんざりしたのか、その場を離れていった。
 何があったのかと気になったロクは一緒に話していたフィラ副班に話しかけた。
 
 「どうしたの?フィラ副班」
 「あぁ、ロクね……。それが……」
 「……?」
 「貴方達より少し後に入ったラミアよ。ほら、第三番隊の」
 「あぁ~」

 そう、今はまだルイルやガネストはいなかったのでラミアが三番隊となっていた。
 何故後に四番隊になったかと言うと、ルイルが我儘を言って三番隊に入ったからだ、という。
 
 「ラミアに愛想つかされちゃった」
 「大丈夫だって。あたしがなんとかしようか?」
 「何とかって……あの子、誰とも喋らないし任務だって1人で行っちゃうし……」
 「……まぁまぁ此処は新人のこのロクアンズにお任せあれっ!!」
 「んじゃあちょっと期待しちゃおうかな」
 「へへっ」

 ロクはフィラ副班との約束を交わし、早速を言うか、調査に入った。
 四六時中ラミアを見張り、観察をしようと試みた。

 だが、あのロクの事。
 そんなのが成功するはずもなくそそくさと食事に向かった。

 「今日はカツ丼341人前下さぁーいっ♪」
 「お前……少しは遠慮というものをだなぁ……」
 「ん?何か言った?」
 「いや……お前の気に障るような事は何も」
 「そうならいいけどー」

 ロクは生き生きしながらカツ丼を待つ。
 すると、ロクからかけ離れた端の方の机から大声が上がった。

 「炒飯大盛りで288人前下さい」

 ロクがその言葉に一瞬で反応し、声が上がった方へ走っていくと…、

 「ラミアッ!?」

 「……は?」

 何と、あの冷血少年(美少年)とも謳われているラミアの姿があった。

 「ラミアって大喰らいだったのっ!?」
 「……だから、お前誰」
 「ん?あたしは第二番隊のロクアンズ・エポールだよ」
 「……あそ」
 「聞いといてそれはないでしょー?」
 「……どいてくれ、食事の邪魔だ」
 「いいじゃんいいじゃん、あたしも一緒に食べて良い?」
 「だからなん……っ!!」 
 「あたし、勝負したい。……ラミアと」
 「しょ……っ」
 「いいでしょ?これから1週間毎に大食い勝負するっての、どう?」
 「面倒だから嫌だ」
 「固い事言わない、一緒の方が美味しいでしょ?」
 「……だからなぁ……」
 「んじゃ今日は……」
 
 (あいつ……まだ食べる気か……?)

 レトがロクの好奇心旺盛な目にため息をついた。
 レトの目の前にはカツ丼が気持ち悪い程並んでいた。
 
 「いいからどいてくれ」
 「いーやーだーっ」
 「ったく……これじゃ上手い飯も不味くなる」
 
 ラミアはそう言って、その場から離れるようにして消えていった。
 ロクは目の前にあった炒飯を残らず平らげた。
 ただ、少ししゅんとしていたようだが。

 「おいロク、お前の頼んだカツ丼を……」
 「あぁ、今食べるよ」
 「お前、さっきあいつに何言ってきたんだよ」
 「一緒に食べようって、誘っただけだよー」
 「……あいつ、この本部内でもやたら目立ってる一匹狼らしいぞ」
 「へぇー……面白そうじゃん」
 「面白そうってお前なぁ……」
 「あたし、こういうの大好きだし♪」
 「それを世の中ではお節介って言うんだぞ?」
 「お節介上等、バカ上等ッ!!!」
 「……そうですかー……」
 「あたしの脳内辞書に『不可能』なんて言葉ないねっ」
 「はいはい……」
 「んじゃ行ってくるーっ!!」
 「お気をつけてー」

 無邪気な顔で走るロクの後姿を、しょうがないと受け止めるかお節介と受け止めるかは自由だが、
 レトは多分しょうがない、と受け止めるだろう。
 他人の事を放っておけず、他人のために一生懸命になれる、ロクに対してなら。

 ただレトは1つ疑問を抱えた。
 何故炒飯を288人前食べて、カツ丼を341人前食べてあれだけ動き回れるのか、を。