最強次元師!!
作者/瑚雲 ◆6leuycUnLw

第006次元 わがまま皇女様Ⅳ
「おぉ~倒してくださいましたか……。なんと礼を詫びたらいいのか……」
「当然の事ですから」
「それじゃあ俺らはもう行きますんで」
「報酬の方はそちらに振り込んどきます。では、ご武運を……」
「まぁ、あんた達にしては良くやった方じゃない?」
「こら、レイス……」
レイスはそれだけ言い残して自室へと戻っていった。
「すみませんね……。あいつ、幼い頃に母を亡くしてからひねくれてしまって……」
「お母さんを?」
「ええ……。昔はもっと心を開いてくれる子だったのに」
「そう、ですか……」
「あの、レイスの部屋を案内して下さい!」
「な、お前何言ってるんだよ」
ロクは、黄緑色の綺麗な瞳を真っ直ぐ皇帝へと向けた。
「……分かりました」
「有難うございます」
「はぁ……まぁいいか」
レトは深い溜め息をついた。
まさかロクがこんな事を言い出すなんて。
「ここです。では……」
「はい、有難うございました」
「おい、ロク何か考えて……」
ロクは思いっきり息を吸った。
「出てきなさい!このひねくれ娘!」
なんて無茶苦茶な。
皇女にそんな事を大声で言える奴はいないだろう。
少なくとも女では無理なのでは……。
「な、何の用!?」
「貴方、母を亡くしたのね」
「……!?」
「そんな事じゃ、強くなれないよ」
「貴方に関係ないでしょ!?」
「貴方はこう言った。『私は誰一人として傷つけちゃいけないの』と」
「……そうだけど?」
「あれは、もう二度と死人を出したくない。って言いたかったんでしょ?」
「な、何で……!」
「あたし達も、母を亡くしたの。しかも貴方と同じ、幼い頃に」
ロクは、自分の辛かった過去について、語り始めた。
いや、自然に声が出てしまったのかも知れない。
「あたし達は死ぬ程義母さんに会いたかった。もう、どうなってもいいから、会いたかった」
レトが、後ろの方に顔を向けた。
「そして、あたし達は人としての道を踏み外したの___」
「え……?」
「あたし達には、幼馴染がいるの。その子は一瞬にして両親を失った」
「…………」
「あたし達は、慰める事さえ、出来なかった」
だけど、あたし達は自分達は大丈夫って思ってたの。
毎日、義母さんの笑顔を見る度、自分達も笑顔になった。
義母さんが大好きだった。
誰よりも、一番大好きだった。
あたし達は、いつも通り、家の手伝いをしてた。
お母さんが後でそっちにも手伝いに行くっていってくれてたの。
でも、何十分待っても来ないからおかしいなと思った。
そしたら、義母さんは倒れてたの。うつぶせの状態で。
急いで医者を呼んだけど、義母さんの命は助からなかった。
葬式の日には、夜遅くまで、いや、次の日になるまでお墓の前で泣いてた。
どうする事もできなかったあたし達兄妹の前に、1人の少年が現れたの。
あたし達と同じくらいの年の子が。
その子は言った。
「母親に、会いたくない?」
と。
その言葉であたし達に希望が出てきた。
「あ、会えるの……?」
「あぁ、もちろん。君達が願うなら」
「ど、どこなんだ!?母さんは?」
「今からちょうど半年後、夜に君達は自分の部屋に行くんだ、いいね?」
「うん、それだけでいいの?」
「ああ」
「母さんに……、会え……、る……」
あたしもレトも、半年後が待ち遠しくてたまらなかった。
やっと会える、やっとお義母さんに会える。
あたし達はそう思っていた。
ううん、そう、信じていたんだ。

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