最強次元師!!
作者/瑚雲 ◆6leuycUnLw

第183次元 愛らしき幼馴染
「ねぇ……キールアちゃん?」
「ひぇ!?……あぁ、み、ミラル副班……?」
お酒を片手に若干酔ったミラル副班が頬を染め、キールアの肩を叩いて話しかけた。
驚いたキールアもきょとんとし、目を大きく開いていた。
ひっく、と1度声を裏返させると、ミラル副班は火照った体をキールアにすりつけ、小声で呟く。
「……んで、どこまでいってるの?」
「え……、え!?」
「惚けないでよ、レト君よ、レト君」
「べ、別に……、何もないです、けど……」
「うっそ、あたしにだけ教えてよ~、ね、ね?」
「だ、だからどうもなってませんって……!!」
半分怒った表情で、キールアはミラル副班の言動に動揺した。
少しだけ頬が赤いのは気のせいか……ミラル副班はそう考えていた。
ふんっとそっぽを向いたキールアは喉を鳴らし、持っていた飲み物を飲み干した。
「あれ?キールアちゃん、もうないの?」
「え、あ、はい……そうですけど」
「あたしが持ってきてあげるぅ~、親切でしょ??」
「あ、ありがとうございます……」
気が進まないも、持って来る手間が省けたので良しとするキールア。
少し短い溜息を吐いて、ちらっとレトの方へ顔を向ける。
エンと2人で何かを話しているようだ。それも可愛らしい笑顔で。
思わずじっと見つめていたキールアの視線に、レトも気がつく。
それに驚いたキールアは慌てて顔を隠し、赤く染まった頬を誤魔化す。
「……」
「……?どうしたレト」
「え、あーいや、何でもない……」
「……あぁ、自慢の幼馴染でも見てたのか?」
「!?、べ、別に自慢じゃ……、ってか見てねぇ」
「この頃あっちが忙しくて碌に話してないだろう」
「まぁ……な」
「これを機に告白でもしてきたらどうだ?皆歓迎してくれるぞ」
「!!?///、だ、し、しねぇよ、んな事!!!」
「……分かりやすいな、お前」
ロクとラミアの大食い勝負を楽しみながらも、レトとエンは言い合いをし続けた。
キールアは顔を隠してしまったのでレトの表情には気付いてないと思うが。
そんな時、帰ってきたミラル副班がぬっと飲み物を指し出す。
「はいっ、キールアちゃん」
「あ……、ありがとうございます」
キールアは渇いた喉を潤すべくジュースを飲み込んだ。
喉越しの良い、深い音が鳴る。横で小さく笑ったミラル副班の事など……気にもせず飲み続けるキールア。
「あ、あれ?これちょ、っと……、苦くありませんか?」
「そう?でもそんなもんよ、パーティの飲み物なんて」
「へぇー……」
その時、キールアの喉がひくっと音を出す。
何か暑いような……そう思ったキールアは着ていた服の胸元をぱたぱたと仰ぐ。
そしてもう1度、キールアの喉元が踊り出す。
(あ、あれ……?)
遂には顔まで火照り出し、その場でふにゃっと潰れ、キールアは近くの椅子に座り込んでしまった。
不思議がったフィラはメッセル副班の肩に蛇梅を置き、そっとその場を抜け出した。
ぎゃーッ!!っと騒ぐメッセル副班の気を留める事なく、火照ったキールアの肩に手を置いた。
「どうしたの?キールアちゃん」
「……んぁ…………ふぃー……」
「?、……暑いわね」
再度キールアの喉がひくりと音を出したので、フィラ副班はぴんときてしまった。
酔っている。
酒を飲んで……正にキールアは酔っていたのだ。
「……ちょっとミラル?」
「はい?」
「未成年に酒を飲ませるとは……いい度胸ね、貴方」
「な、何の事かしらーっ?」
「……蛇梅に噛まれるか自首するか、好きな方を選ばせてあげる」
「…………あ、あたしがやりました」
見事な戦術でミラル副班に自首へと追い込み、フィラ副班はキールアの顔を覗き込んだ。
明らかに火照り、酔っている。
喉奥がひくっ、ひくっ、っと、まだ鳴り続けていた。
「ったくー……、何でこんな事したのよ」
「だってキールアちゃん、ガード固いんだもん」
「誰がベッドまで運ぶの?……ん?」
フィラ副班はふいに振り返った。
目の前に映ったのは、レトが怯えている景色。
明らかにこちらを向いてびくびくと震え上がっている。
「……どうしたの?」
「い、いや……俺……」
「?」
「……そ、そのキールア……マジで苦手なんですけど……」
「な、何で?」
「何でって……昔キールアが酒飲んで酔ってレトに――――」
「って、ロク!?、大食い勝負は?」
「勝ったよ、5杯差だったけど」
「あぁ……そう」
向こうに見えるのは大食い勝負で負けて悔しんでいるラミアの姿だった。
積み上げられた皿の数は数えられない、そんな根性は沸いてこなかった。
ロクはふふん、っと口元を歪ませながら勝ち誇った笑みを浮かべている。
「まぁ、その時のレトが見たいならキールアの事はレトに任せた方がいいよ?」
「そう、なの?」
「ほら、キールア起きちゃった」
ロクが指差した先にいるのは、酔って火照り込んだキールア。
キールアはまるで子犬のような仕草で目を擦り、顔を見上げる。
「あれぇー……、もうおはようの時間なの……?」
その時、そのキールアの仕草に心臓を射抜かれた男性はまず8割であろう。
うにゃりと潰れ、赤く染まった顔はまるで照れているようにも見え、かなり酔っていた。
そのキールアの可愛らしい姿といったら、本当に愛らしい猫のようで、
まるで強請るように……強くその金色の視線を送る。
「き、きーるあ……ちゃん?」
大半の男性は此処で鼻血を吹き荒らすだろう。とても少女とは思えない。
少女以上の可愛い小動物のように、その生き物はふにゃーと声を上げる。
「あ……レトだぁっ」
「っ!?」
「れーとぉー……?」
「な、ななん、です……か?」
「へへへ、だぁーいすきっ」
ぐぼぁッ!!?っとレトは口元を抑えて悶えていた。
可愛すぎる、普段“大好き”などと直球に言葉を言わない筈のキールアが、今では全開である。
絶対に言わない、言われないその言葉をあの可愛らしい顔で言われたレトはどんな気持ちか。
男性陣の鋭い目つきがレトへと突き刺さる。
「お、落ち着けキールア。お前はそんなキャラじゃない、ぞ……?」
「あたしはあたしだよ……?もしかして忘れちゃったの……?」
「そ、そうじゃ、なくって……っ」
「……とりあえず、キールアちゃんは寝かせる冪ね。ほら、行くわよキールアちゃん?」
「やだやだやぁーだっ!!、あたしレトと一緒に寝るぅーっ!!」
レトは喉奥から吐き出されそうな血を必死に押さえ込んで火照った心臓も冷静な心で冷やそうとする。
言い張るキールアの怒った表情も可愛らしく、最早誰にも止められない。
結果、言い聞かせても駄々を捏ねるキールアは、レトが持ち帰る事となってしまった。

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