最強次元師!!
作者/瑚雲 ◆6leuycUnLw

第147次元 神族×神族
「どうしたの?かかってこないの?」
何度もロクに声をかける、もう1人のロク。
応答する事なく、ロクは佇む。
「…」
「もしかして、驚いてる?」
「…驚いてるよ」
「やだなぁー、見慣れてるでしょ?」
(どういう事…?鏡の能力は神族にも使えるっていうの…?)
正に神族同士の戦いだった。
世界で有り得ない、
禁じられた戦い。
「…まぁいっか。さっさと倒してレト達を探しに行くっ!!」
「…さっさと、とはいかないと思うけどね♪」
ザ…ッ!!と2人とも足場を踏み慣らし、お互いを睨み合う。
「「第五次元発動―――――――、雷弾ッ!!!」」
両方から放たれる無数の雷。
まるで隕石のように雷は敵を目掛けて向かってくる。
2人はその攻撃を器用にかわし、偽者はくるっとまわって着地した。
「…!?」
「…驚いた?」
「何で…同じ事を…?」
「当たり前じゃない。だって――――――」
その瞬間、偽者の姿は消えた。
(後ろから狙っ…――――!?)
ロクがバッ!!!っと後ろを向いた時には、
偽者の姿はなかった。
「――――――――心の神族、でしょ?」
既に前にいた偽者は、ロクが避ける暇も与えず、
「雷撃ィィィィーーーッ!!!」
真正面から雷撃を放つ。
「ぐぁぁぁああッ!!」
あの莫大なる大きな術を正面で受けるなど、
死を覚悟をする事この上ない。
「ぐ…ッ!!」
「なぁーんだ、案外しぶといじゃん」
「こういう…性格なんでね…」
「…そんなの分かってるよ」
「…」
「心の神族なんだから」
そう、偽者は微笑んだ。
腕を負傷したロクは、右腕を掴んで起き上がる。
「…さて、こっから本番かなぁ?ロクアンズ」
「手なんか…絶対抜かないからねッ!!!」
ロクは腕を離して偽者から離れた。
偽者は鼻歌を歌いながら、笑いながら佇む。
「雷撃ィィィーーーッ!!!」
ロクは手を目の前に翳し、一気に雷撃を放つ。
「んじゃ…――――雷払ッ!!!」
「…!?」
偽者はロクも聞いた事もない技を繰り出した。
偽者は手をクロスしたまま雷撃を横へとなぎ払うように払った。
その技は…たった1発で雷撃をなぎ払い、全てを無効化させた。
「な…っ!?」
「偽者ってったって、別に完全コピーじゃないよ?君の使えない技も扱える」
「雷…払…・」
「そう、その技は雷により全ての魔法攻撃をなぎ払い、しかも使い方を変えれば直接攻撃にもなる」
「そんな…技が…」
「…さてさて…質問ターイムっ!!」
偽者は、指を立て、大きく手を挙げて叫んだ。
確かに偽者は、『質問タイム』と言ったが。
「…?」
「さてさて、君は神族だよね?」
「そうだけど…」
「君に、守りたいものってある?」
(守りたいもの…?)
「ほら、大事な人とか…」
「あぁ」
「何かあるでしょー?」
「人間だよ」
「人間?」
「この世の人間全員、あたしの守りたいもの」
「…へぇー…」
偽者は、目を細めて小さく呟いた。
「…でも、君は神族なんだよね?」
「…?」
「神族ってさ、ほら、人間の敵じゃん」
「…そうだよ?」
「信用なんて、得られるの?」
ロクが幾日も幾日も考えていた大きな問題。
神族のロクにとっても、とても大きな壁だった。
「…信用なんて、いらないじゃん」
「へ?」
「あたしが勝手に人間を守りたいだけ」
「…ガネスト、ルイル、ラミア、ティリナサ、ミル、リルダ」
「…!?」
「コールド、フィラ、メッセル、テルガ、ヴェイン、セブン、レトヴェール、キールア」
「……」
「今言った全員の信用を、君が得ているとでも?」
「…得てないよ」
「もし君の事…、軽蔑してたらどうするの?」
「ど…どうでもいい」
「嫌いだとか、消えてほしいとか…、もしかしたら死んでほしいとかも思ってるかもねぇー♪」
「……そんなの…関係ないッ!!」
ロクにとって、人間を守るのは当たり前の事。
人間からの信用など要らないと、幾度も自分に言い聞かせた。
いや、言い聞かせたつもりだった。
まだ心の中に闇がある。
怖いという…たった1つだけの感情。
心の神は…どう捕らえるのだろうか。

小説大会受賞作品
スポンサード リンク