最強次元師!!

作者/瑚雲 ◆6leuycUnLw



番外編 メイド喫茶祭り(1)



 「ガネスト~、これ着てー!」
 「い、嫌です!、そ、それメイド服じゃないですか!!」
 「だってガネスト似合うじゃーん、ね、ね、着て着てー♪」
 「い、嫌だぁぁぁ!」

 蛇梅隊の任務室。
 そこではガネストとルイルが追いかけっこをしているように見える。
 ルイルは可愛らしいピンクのメイド服を持ち、ガネストを追いかけていた。
 そこで、ちょうど近くでコーヒーを飲んでいたセブン班長が何かひらめいた。

 「……!?、良い事思いついた……かも……」

              *

 昼のちょっと過ぎ頃。
 レトやロク、他多数の次元師隊員達が班長室へと移動していた。
 そこには副班長などはいなく、子供だけが集まっている。
 
 「班長ー、何の用っすかー」
 「あたし達に何か用でもあるの?」
 「特別任務か何かか?」
 
 色々とざわざわしている中、奥の部屋から班長が颯爽と現れた。
 広いソファに座り、コーヒーを一口口に含むと、ごほんと一つ咳をした。
 
 「……お前達を呼んだのは、一つ蛇梅隊内で悩んでいる事があったからなんだ」
 「悩んでる事?」
 「あぁ、実は、なぁ……」

 班長が頭を抱え、真剣そうにレト達を見つめた。
 その目は確かに悩んでいるようにも見える。
 
 「ロクの……」
 「ロク?」
 「ロクの食事代に蛇梅隊のお金がピンチなんだぁぁぁぁぁッ!」
 「え……、あ、あたし……?」
 「そうだ!ロクの一日の食事代は一番高い!朝、昼、晩全部で300人前は食ってるだろーー!」
 「えぇー!?ロクちゃんってそんなに食べてたのー?」
 「俺はいつも一緒だから分かるけどな」
 「なら注意しろよ……」
 「と、言う事で君達にお願いがある」
 「お願いー?」
 「そう、君達には隣にこっそり建てた店で働いてもらおうと思ってな」
 「お店?ファウストフードとかの?」
 「いいや、それは違う。俺が君達に望んだのは男でも女でもできる超簡単なお仕事」

 班長がふふふと笑い、足元に置いてあった服を取り出した。

 「そう、メイド喫茶だぁぁぁぁぁッ!!」
 「「「「「はぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」」」

 その場にいたティリ以外の5人は大声を張り上げ驚いた。
 班長が愉快そうに笑い、5人は硬直状態で固まっている。

 「おい、どういう事だよ」
 「そんな冷たく言うなって。ガネストもラミアもレトも女の子になろうと思えばなれるだろ?」
 「そういう問題じゃなくて!なんでそんな事やんなきゃいけねーんだよ!」
 「だーかーらー、ロクの食事代を稼ぐためだって」

 レトとラミアがきッとロクを睨んだ。
 その恐ろしい顔を向けられロクは一瞬震え上がった。
 
 「まぁまぁやってみれば分かるって。さぁさぁ今日から早速やっるぞー♪」
 「班長ぶっ殺す!!」
 「俺達に恥を掻かせる気か」

 レトが中指だけを立て上にしゅッと上げた。
 ラミアが冷たい声で突っ込み、ため息をつく。
 そう、これが本当にロクの食事代のせいなのか、それともただの班長の趣味なのかは分からなかった。



番外編 メイド喫茶祭り(2)



 「「「いらっしゃいませー♪」」」

 ロクとルイルとミルの満面の笑顔からスタートした蛇梅隊特別メイド喫茶店。
 流石、ルイルやミルは可愛く、ロクは腰に手を当てて出迎えている。
 キールアも強制参加され、女子隊員もにぎやかに。

 「もう男子どもー、さっさと出てきなよー」
 「あたし、レトのメイド姿みたいなー……」
 「ガネストー!遅いよ~?」

 3人が呼びかけしたものの、やはり恥ずかしいのか3人の男子は来なかった。
 まぁ当たり前と言ったら当たり前だ。
 今まで戦闘を続け、男として生きてきたレト、ガネスト、ラミアがまさかメイド服を着ているなんて。
 
 「でもラミアもかっわいー!やっぱり髪が長いだけあるよねー」
 「ガネストは元々女の子みたいな顔してるから可愛いのは当然だよぉ♪」
 「レトは、金髪でしかも一つ結びだから女の子みたいな髪型だもんねー」
 「まぁまぁレジはティリに任せてさっさと来なよー」

 ルイルとロクとミルが言っている事は確かに納得できた。

 ラミアは長い青色の髪を一つに結び、たまに女性に間違えられるほどの美人で、
 ガネストは泣いた顔も困った顔も笑顔も全て女の子同然。
 レトは金髪、というイメージからしてご令嬢のような感じなので、何かと女の子っぽい。
 3人とも端の方で体育座りをしながら固まっていた。

 「もうー、情けないなー」
 「レト、こういうの嫌いだもんね」
 「……」
 「何?ロク」
 「キールアは医者な分可愛すぎるね。少しずるいよー」
 「えぇー!?そんなの関係あるのー?」
 「あると思う」
 
 ロクがトレイを片手にキールアをじろじろと見つめた。
 ロクはこういうのが趣味なのか何なのか、いつも以上に張り切っている。

 「うし!たくさんお客さん呼ぶよー!」
 「もう来てるから、オーダー宜しく」
 「え、あぁ本当だ。あたし聞いてくるー」
 「宜しくねー、ロク」

 男子3人はため息をつき、ぐちぐちと何か語っていた。
 やはり班長への文句だろう。

 「うぜぇ、あとで3人で班長フルボッコしに行こうぜ」
 「俺賛成。つか大賛成」
 「僕もです。一発弾丸でも撃ち込んでみますかね」
 「しょうがない、まぁ一回くらいなら働くか」
 「え、レトやるのか?」
 「まぁ、あとで怒られるの嫌だし」

 レトがすくっと立ち、可愛らしいピンクのフリルのメイド服で歩いた。
 その勇敢な姿にラミアもガネストも立ち上がった。
 
 「レトー、ミルクコーヒーとチョコパフェお願いー」
 「分かったー、ガネストに伝えとくわー」
 「やっぱガネストなんだ……」

 ガネストが注文通りの品を作り、見事綺麗で美味しそうなパフェとミルクコーヒーが出来上がった。
 それをレトが受け取り注文場所へと持っていく途中。
 お客さんの足につっかかり、ばたんと勢いよく倒れてしまった。
 
 「わぁッ!」
 
 コーヒーを頭にかぶり、びしょ濡れになってしまったレト。
 しかもひっかかってしまった足の主は男性だった。

 「あ……、ご、ごめんなさい……」

 とか弱い声でつい謝ってしまったレトのその顔の可愛い事。
 潤んだ瞳を光らせ、本物の女性のような顔を男性に向けてしまった。
 その表情に一瞬にして男性はどきりと胸を躍らせ、レトに手を差し伸べた。

 「大丈夫ですか?お嬢さん」
 「え……あ、はい……」

 お嬢さんと言われ、レトは一瞬戸惑った。
 周りのお客さんも和んでいる様子で、確実にレトを女の子だと思ってしまっただろう。

 「レト、反則ー」
 「な、何が!?」
 「可愛すぎ、はい反省しなさい」
 「意味分からん……」

 ロクに指摘を受け、レトが更衣室へと向かった。
 ガネストもため息をついて、また作り直す。
 ラミアはとっくに男性に囲まれていて、逃げる隙もないとか。
 
 「たく……、俺は男だっつうの」
  
 レトがため息をつきながらロッカーを開けると、
 やはりというか、新品のさっきよりもフリルの多いメイド服が出てきた。
 というか、まさしく猫耳らしき物も。

 「俺に何を着ろってんだ、あの班長はぁぁぁぁ!!」
 
 レトが更衣室で叫んだ。
 その声は更衣室中を駆け巡り、他の人には届かなかった。
 班長の目的が、ますます分からなくなったレトだった。

番外編 メイド喫茶祭り(3)



 「「「ありがとうございましたーッ」」」

 くたくたで疲れきったロクとミルとルイルの声で1日メイド喫茶は幕を閉じた

 店を閉め、皆はぐったりと椅子に腰をかけ、水を飲んでいた。
 よく12時間も耐えたものだ。

 「皆よく頑張ったなぁーッ」
 「もう勘弁してくれ……」
 「二度とやりたくねぇ」
 「まぁまぁおう言わずに、本当によくやったよ」
 「んじゃあこれで食事代は安定したんですか?」
 「もちろんだ、まったくお疲れ様だ!」

 班長は何もしていないというのに。
 さて、これで本当にロクの食事代をこれからも維持できるのだろうか。
 班長はロクの食事代のせいだと言ったが。

 「本当にお疲れ様だ。ご協力ありがとうー」
 「はいはい、もう着替えていいのか?」
 「いいぞ、もう十分だ」
 「?」
 
 レトが班長室を出ようと思いドアノブに手をかけた。
 後ろを向くと、なにやらひそひそとしている班長が見える。
 その様子はまさしく焦っているようにも見えた。

 「……」
 「あ、も、もう帰っていいんだぞ?用事はすんだからなッ!」
 「班長、用事って何ですか」
 「え、め、メイド喫茶だよ!?もう終わったからさぁ帰った帰った!」
 「あーーーーッ!!」

 ロクが思い切り叫んだ。
 班長は後ろで何か持っている。
 それは、写真のようだ。

 「あ……あ……」
 「どうした?ロク」
 「あたし達の写真だーーーーッ」
 「は?」
 「い、いやこれは違う!断じて違う!」

 そう言った班長の手からはバラバラと写真が落ちた。
 その写真はまさしく今日メイド服で働いたロク達の写真。
 まさか、隠し撮りがバレるだなんて思ってもみなかったのだろう。

 「……班長」
 「に、逃げるが勝ちだぁぁぁぁ!」
 「あ、逃がすかーーーーッ!」
 「皆、追えーーーー!」 
 「「「おうーーッ!」」」
 
 逃げた班長を追い、蛇梅隊隊員は走り出す。
 まさか盗撮していたとは、油断も隙もない人だ。
 こんな人が班長でこの先やっていけるのかとフィラ副班は思っていた。
 
 班長の腕にしっかりと護られた蛇梅隊隊員の写真。
 その写真はこれからも、ずっと。
 この蛇梅隊本部に残るのだろう。
 一つの、思い出として。