Ultima Fabura―終焉へ向かう物語―
Aerith ◆E6jWURZ/tw 作

第七話 衝突 SHOT 1 〝異空間魔法〟
自らの敵の姿を目で総舐めするとケフカは少し興醒めしたように肩をすくめた。
ヴィル達の辺りを取り囲む敵集団から滲み出る魔力は半端なものではない。禍々しく強大だ。
「へーへー銀魔位【ギンマイ】程度のレベルでボクチン達金魔位【コマイ】を倒そうだなんて勇者なことだねェ」
「銀魔位? 金魔位??」
聞きなれない言葉に首を傾げたテフィルの発言に、ケフカは小馬鹿にするような「ぷぷーっ!」という笑いをした。浮遊する妖艶な敵側の女性が冷たい視線を浴びせ、ヴィルはフェルドから鋭い殺気を感じた。
「そんなのも知らないの?? ひひゃっひゃっひゃっひゃ! ならな~んにも知らない餓鬼んちょ天使君に天才ボクチンが教えてあげちゃいましょうかしらねぇ!?」
「ケフカさん・・・五月蝿すぎて死んでしまえばいいのに・・・」
溜息交じりに小さな少女が言う。ケフカが耳ざとくそれを聞きつけて憤慨するが、魔女の冷笑が相当聞いたようで反論することを止めた。しかしケフカは「では改めて!」と咳払いをした。
「一番弱っちいのが黄金【コガネ】!次は金藍【コアイ】でその上が金碧【コヘキ】!んで最上級が金朱【コシュ】。そうそう、いまいち実感湧かないかもしれないから付け足しておくとねぇ、黄金の下が銀紅だよん!」
「なっ!!?」
思わずフェルドの口から驚愕の声が漏れる。ケフカは彼の反応に満足したように笑うと、そのまま両手を挙げた。敵陣が彼を注視する。ヴィルたちも警戒しつつそちらに向いた。
「さァ何の勝ち目も無い銀の精鋭と最強軍団金の精鋭! 君らはこれからボクらと1VS1で戦ってもらうよ!」
「「「は??」」」
ヴィルたち側の何人かが声を上げる。こっちには子供もいるのだ。やはり、彼らもつれてきたのは失敗だった・・・と後悔するにはあまりにも遅すぎた。
デスマッチ
「行っくよぉ! 異空間魔術・【大死闘】!!!!!!」
刹那、強力な陣旋風と共に双方は10個の小さな宇宙のような渦の中に飛ばされた。
敵と味方、一箇所にその双方が一人ずつ。
* *
「あの道化師、生意気だな。僕に女の子 一人か」
「・・・みくびらないで。あたし、強いですよ」
「へぇ、君は? 僕はデュラ」
「あたしカテーナ」
闇の中向き合う、少女・カテーナの袖から、上着のすそから、鎖が這い出てくる。少年・デュラの体のあらゆるところから(作者曰く最悪なことに)虫がざわざわと湧き出てくる。
いつの間にか晴れた闇。彼らがいるのは、暗い隙間から光の漏れ出でる廃墟のような場所だった。
「「楽しみましょうか」」
* *
玉乗りしながら暗闇に目を凝らす、この好かれない道化師はひとつくしゃみをした。
「あんれ~? 誰かボクチンの噂してる?? ・・・ん? どわっち!」
「五月蝿い・・・道化師・・・その涙・・・本物にしてあげます」
炎を纏った右翼を広げたまま、フィニクスが静かに言い放った。今さっき放たれた炎の羽根は間一髪身をかわしたケフカの脇を飛んでいった。まるでロケット花火のごとく、それは遠ざかりつつもヒューッという音を立てているのが聞こえた。
「へぇ! 君が獣使いで、ボクチンがライオン役??」
「・・・ライオンは・・・輪をくぐれず焼け死ぬ・・・」
「恐いこと言うね!」
言うとケフカは指の先に小さな黒いボールを蓄えた。ブラックホールのような、それを。
彼らがいるのはサーカス団のステージだった。
* *
こちら女タラシサイド。
相手が男性だったらやる気失せるやな~とか女性だったら攻撃しづらいねんけどということで頭がいっぱいである。
とりあえず女性て女の子しか視界的に見えなかったんだよね、と落胆している。
「・・・はぁ」
「ほう、わしの相手は貴様か」
唐突に考え事をしていたシュヴェロの耳に入った声に、彼の女性アンテナ作動。
そこにいたのは浮遊している、露出多過な美女だった。
「うお・・・」
「どうした? わしの姿を見て怖気ついたか」
「あ・・・いや・・・近くで見ると綺麗やな・・・と思うて。名前は?」
「・・・ジアンタングイス」
小馬鹿にしていた視線に殺気の色がかなり宿る。元々タラシのシュヴェロからすればそれさえ美しく映った。
仲間にもあきれられる彼の女好きな性格はもうどうしたらいいんでしょ。
「あかんあかん。わいはミュレアちゃん助けに来たんやって。そこ、どいてーな」
「わしがそんな虚け者に映るか? 不愉快よの・・・」
ラミア
蛇女のごとく、ジアンタングイスの身体中から大蛇が生成される。
蛇嫌いな人には地獄の化物そのものだが、シュヴェロはすっかり虜だ。駄目だこりゃ。
* *
暗闇の中、おっさんくさい声をあげてジェッズは大あくびをした。敵の姿は一向に見えないし、退屈だ。
そんなことを思っていると、ジェッズは向こうのほうに人影を発見。
「お? おーい! 姉ちゃん!」
オールドローズのローブ。真紅の巫女服。少女な後姿だった。
そういえば、なんだか見たことのある姿だ――。
「ん、姉ちゃん・・・もしかしてあんた、ティテリか?」
「あなたは・・・?」
少女――ティテリは振り返る。やはり、見覚えがある。
「生きてたのか・・・」
「あの・・・ごめんなさい。覚えてないんです。わたしあなたを倒して、記憶を手に入れなきゃ・・・」
そこは病院だった。
* *
フェルドは見えた人影にいきなり、風の刃を放った。
するとそいつはバラバラと砕ける。不審に思って近づくと、ただの氷だった。
「君だれ。おもしろい。」
背後でいきなり聞こえた声に、背筋の悪寒を嫌というほど感じる。
なんだ、コイツ。気配さえ感じなかった・・・。
「ねぇ。君。戦わない?」
背後の敵は笑った。冷徹な、その美しい顔で。
* *
一方此処はもっぱら仲のいい双子と、兄弟の4人。
なんの不手際か一緒になってしまったらしい。双子は歓喜しているが、兄弟は言い合っている。
「どけ、邪魔だ」
「うっせえ、だまっとけ!俺一人で十分だ」
「「はぁ・・・」」
戦闘どころの話ではない。二人は互いに戦い始めかねないような状況だった。
* *
鎧の男の後ろで、足音など全くさせずに静かに歩み寄った。少し長い、蒼っぽい銀髪は靄を飛ばすことの無い風に吹かれ、その間に垣間見える男のうなじには魔方陣が覗いていた。
鎧の男は振り返らないまま太い槍を抜いた。
「・・・久しぶりだな。ライシェル」
「お前・・・。まだ奴の下に?」
その質問には答えず、抜いた槍は爆風を起こした。白狼、ライシェルはそれをものともしないまま風は靄を飛ばした。そこにあったのは、軍の訓練基地のようなところだった。
「なつかしいだろう?」
「ああ」
ライシェルはかつての戦友――トゥザムと向かい合った。
* *
焼け野原で、攻撃をかわすのみのヴィル。攻撃しているのは、なんと――味方であるはずの、リトゥス。
「なんで?? なんでだ? 俺達、仲間だろ??」
「ふふふ、騙された~。 ごめんね、今までの全部嘘なんだよね♪」
つまり。リトゥスは笑った。
「わたしは仲間じゃない。アンタたちの、敵よ」
そう。彼女は
――裏切りの鴉。

小説大会受賞作品
スポンサード リンク