Ultima Fabura―終焉へ向かう物語―

Aerith ◆E6jWURZ/tw     作



第七話 衝突    SHOT 4 〝色〟



――なぁ、ティテリ。お前と最後に会ったのはいつだったか? いや、それよりも・・・。本当に、生き返ってくれたのか? なぁ。お前だけはあの時と変わらないまんまだな。俺達が初めて出会った時と、変わらないな――
          リブロスイロンハスタ
「鋼鉄針線・【三本の鉄槍】!!!」
「おわっ !!!・・・容赦ねぇーなぁ・・・」
見えない鉄の槍。それが自分に向かってくる気配を感じた。風を切る音、その動き。間一髪で回避すると透明な鉄の槍が三本、なびくジェッズのマントを貫する。冷汗が背中を伝った。

「なぜ・・・」
「ぅわっちゃっと!!」
「なぜ・・・!」
「ぁぶねっ!」
繰り返し言う度に、透明な有刺鉄線が飛ぶ速度は増す。しかし芯がぶれ、命中率は下がっている・・・。ジェッズは陽気な感じに発声しながらもそう冷静に分析していた。しかしジェッズはつくづく思う。
延長戦って、俺にはキツいよなぁ・・・。
歳相応にキツい。仮にも相手は14歳、自分は30代のおっさんだ。何よりマズいのは、ジェッズに

――戦う意志が無いことだった。

「なんで、なんで・・・っ!」
            バレットフルマスクツルム
「ウッ! 畜生ぉ、【火炎弾の楯】!!!!!」
槍の一本がジェッズの毛先に触れ、その先端が弾け飛ぶように勢い良く切れた。次の攻撃に備える為赤黒く燃える壁がジェッズの前に現れ、見えない凶器をはじいた。だが相手にダメージは食らわせていない。いや、当然か。そもそも戦意が無いのだから。しかしそれが余計にティテリを苛立たせる原因になっていた。

「なんで攻撃しないんですか・・・っ!」
「お前が――」
苦悶に満ちた声に、ぶくぶくとジェッズの右腕を膨れ上がらせているマグマが成長し、成長し―――――
「俺の――」
それに気を取られ、防御も回避も出来ないティテリへと迫る。大きく振り被った右腕の拳はマグマによって何倍にも膨れ上がっていた。それにティテリは大きく目を見開き、再び目を瞑り、腕で顔を覆い尽くすしかない。

だが自分の骨の芯まで灼熱の炎で焼き尽くすその熱く苦しい拳がぶつかる気配は無かった。代わりにそれと近い熱気が隣に激突した。その恐怖と、暑さに思わず目を開く。
「未来の嫁さんだからだよ」

え・・・?




                    *                    *


礼拝堂の中、巻き起こった爆風が茶色のマントをはためかせ、深緑のマントが翻る。黒髪と白髪の二人の美少年が衝突し、その神聖な空気をも凍りつかせるような風が吹雪く。

「―――おもしろい。君。おもしろいよ。強くなってる」
「それはどうも」
不適に笑ったフェルドの瞳は今や完全なる銀の翠――銀翠だった。彼の刃は凍りついているが、それを利用してさえいる。切れ味も鋭くなっていることだろう。しかしそれに対抗してか、大きく破壊力のある剣と小さな小回りの利く剣を構えているアールの双剣にも氷がそれらを覆い尽くすように纏わり付いていた。

「あんたは知らないだろうがな」
「何」
強敵。アールの懐に飛び込み、フェルドが腕を振るう。しかしそう簡単に彼を切りつけることが出来るわけでもなく、アールは後ろへと宙返りで跳躍し、間合いを取る。それを瞬時に詰め、次々と斬りつける。それに対抗し、アールは双剣で全ての斬撃を受け止めていった。
ドラコ
「竜族は通常の種族よりも高く大きく戦闘の経験値を得ている。俺が強くなってるのもその所為だ」
「へぇ」
息つく暇も与えない位攻め続けていたフェルドは急に後方へと跳ぶと、戦いを楽しんでいるかのように口の端をわずかに吊り上げ、左で握り拳を作ると空を切るように変化させた手刀をビッと水平に左へ引いた。
それにより生み出された真空刃が目にも留まらぬ速さで飛び、アールの元へと向かった。
「おもしろいよ。君、大きな可能性、感じる」
双剣共巨大なものに戻したアールはそれを自らの前で交差させると身構えた。刹那、真空刃が彼の元までに到達し爆風が起きた。斬撃は双剣と接触した瞬間高い金属音を発しながらアールの体を強く押した。
爆風により白くなった視界の中、斬撃が雨散霧消した。それを見たフェルドが溜息をつく。

「やっぱこんな低い程度の攻撃じゃ無理だな・・・」
「だね。で、終わり?」
息も上がっていない、か。ひゅぅと息を吸い、フェルドは楽しみながらも感じていた緊張をわずかにもほぐす。魔力を高め、フェルドはそれを刃のように精製させながら見えない刃を身に纏う。
あいつら・・・誰も死んでないだろうな。

「あんたは気づいてないだろうが・・・。瞳の色って、一回なったやつには変えることが出来るじゃないか?」
「――え」
 、、、
「俺らもそうなのさ」
フェルドの瞳が銀蒼から銀翠へ、銀翠から銀紅へ――。


「これで判ったろ? 俺達とあんた達とでは思ったほどの差は無いのさ」