Ultima Fabura―終焉へ向かう物語―

Aerith ◆E6jWURZ/tw     作



〆第四章 〝時の白魔導士〟 -At the time of White Mage-   prologue



 遠方に潮騒の聞こえる風吹く丘に、一人の女がいた。
 女の後方には森。足元は崖。少し向こうには青く光る水平線が覗く。潮風を浴びつつ女は目を閉じた。

届け―――――。

 一陣の強風がぶわっ、と吹いた。翻ったそのマントは純白に輝いていた。







 全てを持つ光は思った。どうして自分だけが全てを持っているのか、と。
 全てを持つ闇は思った。どうして自分には全てを持っているのにこんなにも空しいのだ、と。


 光は求めた。真に一つを、と。
 闇は求めた。真に全てを、と。

 光は全てを失い、ひとつを手に入れた。
 光は満足感も記憶と共に失ってしまった。

 闇は全てをも失わず全てを手に入れた。
 闇は満ち足りた為、何も感じなくなった。


光は動いた。使命のままに。
闇は動いた。復讐のままに。

今、時は流れる。


                    *                      *


 3人の男女が、戦っていた。
 少年は日本刀で
 女は槍で
 もう一人の少年は及び腰のままで。

「てめー!! 使い物にならねぇなっ!! いっぺんあっち行って叩かれて来いっ!!!」
「『あっち』ってどこじゃあ!!」
「あっちはあっちだっ、ばーーーーか!!」
 少年は、白き聖なる魔方陣の中にぶち込まれた。叫び、空を掻きながらしかし空しく落ちてゆく。

だめだ。少年はあきらめた。
少年の末路はしかしすぐではなかった。

「あ、れ・・・・・・?」


                    *                      *


 あれ? 俺はいつから、どうしてここにいるんだったか。
 確か・・・。そうだ、井戸。
 あれに落ちて、そこで何か賢い少女に逢って。
 俺とアイツが出会ってあれからもう7年・・・。美人になってるかもなぁ。

此処に来てから、俺の時は止まったままだ。
結局此処がどこなのかも判らないし、どうしたら自分の世界に戻れんのかも・・・。

 男は腰の日本刀を抜くと、横から来た魔物を薙ぎ払った。
「――どこにいるんだ」
無事なのか?

 どうなんだ?

空は何も応えてはくれない。
沈黙する空に溜息をつき、男は刀を仕舞った。