ブラッドエッジ

作者/ 紅蓮の流星 ◆vcRbhehpKE



#etc.元気ですかーッ!?



「……ぉおおぅ…」
「すっ…げぇぇぇ…」
 突然ながら、ベールです。
今私は断罪者本部のロビーに居るのですが、
なにやらルージュさんとノワールさんが何かを二人で見て感嘆している模様であります。
何なのでしょうか。どうやら、私はそれに若干の興味を抱いている模様です。
自分から興味を持って学んでいくことは大切なことだと、透さんも仰っておりました。
なので、まずはあのお二方に話しかけてみようかと思います。
「何をご閲覧なさっているのですか?」
「あ、ベール」
「お、丁度いいところに来た。これ見てくれよ、これ」
そう言って、ノワールさんが指差した小型ディスプレイの画面を確認してみると

画面の中で繰り広げられていたのは、筋肉質な人間の男性が、同じく筋肉質な人間の男性を豪快に投げ飛ばした瞬間でした。

「これ…はッ…!?」
「『トゥルーズ』が発祥するよりも前に普及していた、『プロレスリング』って競技らしいです」
「ローズさん」
ローズさんが冷めた風な態度で、カフェオイルを持ってきてくれました。
「っすっげぇ! ノワール、今見た!?」
「見た見た! うぉー、綺麗にジャーマンスープレックス決めたよ! すげぇ!」
「やっぱこの『アントニオイノキ』って人強いって! たぶん一番強いでしょ!」
「いや、でも俺はさっきの『ジャイアントババ』って人を推すな。名前がもうすげぇだろ、ジャイアントだぜ?」
「いやいや、絶対イノキの方が強いね!」
「いーや、絶対ババの方がぎょばい!」
「ぎょばいってなんだよ!」
「はあ…全く、こんなの見て何が楽しいんでしょうね。ね、ベール」
「…………………」
「…ベール?」
「ローズさん」
「な…何ですか?」

「……世の中には、こんなに素晴らしい競技があったのですね」

「ゑっ?」
「やはり、学ぶこととは素晴らしい事ですね」
「ふえ? え、ちょ…何してるのベール、いきなりノワールを後ろから抱えて」
「え、ちょ…ま、お待ちくださいなお嬢さん! 
 突然そんな積極的なアプローチをされてもノワールさんまだそんな心の準備ができていないとのことでありましてその」
さっきの動画のように、相手を思い切り掴んだら、一気に後ろに体重をかけて……!
「いやその積極的なのは嫌いじゃないですけどそのほらムードというか段階を踏んでですね…って、え?」

「ジャーマンスープレックスッッッ!!」
「ぎゃんっ!」

見事に豪快な音とともに、私のジャーマンスープレックスが決まった音。
今のは完璧だった。
透さん、確かに興味を持って自分から学んでいくこととは重要な事なのですね。
私は今、昔の闘技術に、新たな戦闘法への活路を見いだしました……!
呆然とする二人を余所に、私は一人勝利のガッツポーズを決めるのでありました。

 その後しばらく、ベールはジャーマンスープレックスで暴走した人造人間を軒並み倒し続けたそうな。

「で、ノワール。御感想は?」
「…人造人間といえども、ちゃんとやわらかかったです」
「変態! ばか! ノワール、近づかないでください!」