ダーク・ファンタジー小説

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

この馬鹿馬鹿しい世界にも……【番外編追加】
日時: 2025/05/23 09:57
名前: ぶたの丸焼き (ID: 5xmy6iiG)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12919

 ※本作品は小説大会には参加致しません。


 ≪目次≫ >>343


 初めまして、ぶたの丸焼きです。
 初心者なので、わかりにくい表現などありましたら、ご指摘願います。
 感想等も、書き込んでくださると嬉しいです。

 この物語は長くなると思いますので、お付き合い、よろしくお願いします。



 ≪注意≫
 ・グロい表現があります。
 ・チートっぽいキャラが出ます。
 ・この物語は、意図的に伏線回収や謎の解明をしなかったりすることがあります。
 ・初投稿作のため、表現や物語の展開の仕方に問題があることが多々あります。作者は初心者です。
 ※調整中



 閲覧回数 300突破11/25
 閲覧回数 500突破12/11
 閲覧回数 700突破12/28
 閲覧回数1000突破 3/13
 閲覧回数1200突破 3/22
 閲覧回数2000突破 5/26
 閲覧回数3000突破 8/16
 閲覧回数4000突破 1/ 4
 閲覧回数5000突破 2/26
 閲覧回数6000突破 4/22
 閲覧回数7000突破 7/15
 閲覧回数8000突破 8/31

 ありがとうございますm(_ _)m
 励みになります!

 完結致しました。長期間に渡るご愛読、ありがとうございました。これからもバカセカをよろしくお願いします。

 ≪キャラ紹介≫
 花園はなぞの 日向ひなた
  天使のような金髪に青眼、美しい容姿を持つ。ただし、左目が白眼(生まれつき)。表情を動かすことはほとんどなく、また、動かしたとしても、その変化は非常にわかりづらい。バケガクのCクラス、Ⅴグループに所属する劣等生。

 笹木野ささきの 龍馬たつま
  通称、リュウ。闇と水を操る魔術師。性格は明るく優しいが、時折笑顔で物騒なことを言い出す。バケガクのCクラス、Ⅱグループに所属する優等生。

 あずま らん
  光と火を操る魔術師。魔法全般を操ることが出来るが、光と火以外は苦手とする。また、水が苦手で、泳げない。 バケガクのCクラス、Ⅱグループに所属する優等生。

 スナタ
  風を操る魔法使い。風以外の魔法は使えない。表情が豊かで性格は明るく、皆から好かれている。少し無茶をしがちだが、やるときはやる。バケガクのCクラス、Ⅲグループに所属する生徒。

 真白ましろ
  治療師ヒーラー。魔力保有量や身体能力に乏しく、唯一の才能といえる治療魔法すらも満足に使えない。おどおどしていて、人と接するのが苦手。バケガクのCクラス、Ⅴグループに所属する劣等生。

 ベル
  日向と本契約を交わしている光の隷属の精霊。温厚な性格で、日向の制止役。

 リン
  日向と仮契約を交わしている風の精霊。好奇心旺盛で、日向とはあまり性格が合わない。

 ジョーカー
  [ジェリーダンジョン]内で突如現れた、謎の人物。〈十の魔族〉の一人、〈黒の道化師〉。日向たちの秘密を知っている模様。リュウを狙う組織に属している。朝日との関わりを持つ。

 花園はなぞの 朝日あさひ
  日向の実の弟。とても姉想いで、リュウに嫉妬している。しかし、その想いには、なにやら裏があるようで? バケガクのGクラス、IVグループに所属する新入生。

 ???
  リュウと魂が同化した、リュウのもう一つの人格。どうして同化したのかは明らかになっていない。リュウに毛嫌いされている。

 ナギー
  真白と仮契約を結んでいる精霊。他の〈アンファン〉と違って、契約を解いたあとも記憶が保たれている不思議な精霊。真白に対しては協力的だったり無関心だったりと、対応が時々によって変わる。
  現在行方不明。

 レヴィアタン
  七つの大罪の一人で、嫉妬の悪魔。真白と契約を結んでいる。第三章時点では真白の持つペンダントに宿っている
が、現在は真白の意思を取り込み人格を乗っ取った。本来の姿は巨大な海蛇。

 学園長
  聖サルヴァツィオーネ学園、通称バケガクの学園長。本名、種族、年齢不明。使える魔法も全てが明らかになっている訳ではなく、謎が多い。時折意味深な発言をする。

 ビリキナ
  朝日と本契約を結んでいる闇の隷属の精霊。元は朝日の祖母の契約精霊であったが、彼女の死亡により契約主を変えた。朝日とともにジョーカーからの指令をこなす。朝日とは魔法の相性は良くないものの、付き合いは上手くやっている。

 ゼノイダ=パルファノエ
  朝日の唯一の友人。〈コールドシープ〉の一族で、大柄。バケガク保護児制度により学園から支援を受け、バケガク寮でくらしている。バケガクのGクラス、Ⅴグループに所属する劣等生。

≪その他≫
 ・小説用イラスト掲示板にイラストがありますので、気が向いたらぜひみてください。

Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.265 )
日時: 2021/12/25 23:01
名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: jBbC/kU.)

>>264
ベリーさんお久しぶりです!
こんなに長いバカセカを読み続けてくださっていること、とても嬉しく思います。ありがとうございます。
羨ましいなんて、そんなそんな……照れますね。
「神が導く学園生活」ですか、興味を引かれる題名ですね。読んでみます!私に影響されてというのがまた嬉しいですね。
バカセカも最終章に入り残り短くなってしまいましたが、これからもバカセカをよろしくお願いします!!

Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.266 )
日時: 2022/01/08 09:01
名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: wNoYLNMT)

 2

 ボクが教室に入ると、賑やかな雰囲気が激変する。静まり返った空気の中、ボクは真っ直ぐに自分の席に向かって歩く。
「おはよう、ゼノ」
 戸惑いの色を浮かべていたゼノだったが、ボクがそう声をかけると、少しだけ緊張が緩んだように微笑んだ。
「うん、おハよう」

 ゼノイダ=パルファノエ。ボクが唯一交友関係を持つ女子生徒。

「アサヒ、元気にしテた?」
「肉体的には健康だったかな」
「なにカ、アったノ?」
「うん。あとで話してあげる」

 教室ここだと人目がある。いまボクたちの周りで小声で話されている内容は、きっとこの間のバケガク校舎崩壊事件のことだろう。あれは、先日生徒会長が王位継承権を正式に剥奪されたこともあって、世界中で話題になっている。生徒会長は父王に「あの場所には、天陽族の花園日向と、吸血鬼族の笹木野龍馬、そして悪魔と化したバケガク生徒の真白がいた」と話したらしい。それを受けて自宅には本家からの呼び出しの手紙が来た(まだ姉ちゃんには見せていない)し、笹木野龍馬も当主から尋問されたらしい。

 けれど、笹木野龍馬は何も語らないと新聞記事には書かれていた。生徒会長は悪魔(真白)がかけたと思われる呪いによる不治の病とやらで深い眠りについているらしく、情報源が笹木野龍馬しかないようで、記者やら貴族やらは笹木野龍馬が属する家に圧力をかけたそうな。すると今度はその家の当主が外部からの圧力を疎ましく思い、世界各国の王族貴族と冷戦状態になったとか。それによってさらに情報が入手しづらくなり、頭を抱える連中も少なくないという。

 ああ、いや、元生徒会長だな。たしか今はエリーゼ=ルジアーダが代理で生徒会長をしているんだった。来年度に向けて近々生徒会総選挙が行われるまでの短い任期ではある。しかしその生徒会総選挙に向けて勢力争いが勃発していて、現生徒会長は問題行動をする生徒の鎮圧に奔走していると聞いた。ここ二、三年は元生徒会長が生徒会長を務めていたためその席を争う者は少なくなっていたが、席が空いたことにより再び争いが起こってしまった。さらにしばらく大人しくしていたため、その数年分の蓄積が爆発してしまい、酷いときだと分単位で問題が起こるようになってしまったという現状だ。
世界中でもバケガクでも、面倒くさいことになっている。

「あトで……っことは、また一緒二オ昼ごはんを食べらレルの?」
「うん。そういうこと」
 ゼノは胸の前で手を組み、はにかんで見せた。
「うれシい。ありがとう」
 何もお礼を言われるようなことはしていない。そう思いつつ、ボクは言う。

「どういたしまして」

 こうしてボクらがいつもの日常会話をしている間も、周囲のざわめきは止まない。

 ──面倒くさいな。

 でも、反応するのも面倒くさい。あいつらと会話をしてもボクに利益なんてないんだから、無駄でしかないし。
 大丈夫。いつものことだ。いつものように耐えればいい。耐えることは得意だ。何故? 何故ボクが耐えねばならない? あんなやつらのために、ボクが、何故。

 不快感は増すばかり。だけど不安そうにボクを見つめるゼノを見て、少し気が落ち着いた。

「大丈夫だよ。いつものことだ」

 今度は、ゼノの表情は晴れなかった。ボクに合わせて、無理に笑ったようだった。

 キーンコーンカーンコーン……

 始業のベルが鳴る。入ってきた担任は、なんとなく感じる居心地の悪さに首を傾げていた。

 3 >>269

Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.267 )
日時: 2022/01/03 02:13
名前: げらっち (ID: 10J78vWC)

はじめて本スレにお邪魔します!雑談掲示板で干されたので!(オイ
自称バカセカファンのゲラッチです。
全部読んでいますし、これからも読みます。ひと段落着くたびに感想を投稿しようと思います。

目に異常って大丈夫……?
私も目は大分悪いが。

スナタって筋肉質だったのか!可愛いぺろぺろ
メイン4人の身長など知りたいな……?

Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.268 )
日時: 2022/01/03 22:08
名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: oQuwGcj3)

いらっしゃいませ!
いつも読んでくださり、さらに感想も言ってくださり、本当にありがとうございます。

目に関しては、現在は落ち着いています。

スナタ可愛いですよね……まて、スナタはギリギリロリじゃないと思うぞ。ぺろぺろするんじゃない。ウチの子に変なことしないでください。
身長等は雑談板のみずかれにて、後日キャラまとめを一人ずつ投稿する予定ですので、良かったら見てください!

ありがとうございました。

Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.269 )
日時: 2022/01/15 09:38
名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: SgaRp269)

 3

「朝日くん、ちょっと」

 昼休み。昼食をとるためにゼノと一緒に移動しようとした直後、そう声をかけられた。
 えっと、誰だっけ。喉につっかかってすぐに名前が浮かばない。
 一束にまとめた緑の髪。金の瞳。尖った耳。エルフか? ボクよりも小柄だから、可能性はある。

 いや、違うな。〈アビアの一族〉だ。思い出した。種族精霊の一つである正真正銘の妖精。学級委員をしているアビア=カシェだっけ?
「なに?」
 話したことがあるかも分からないし、話しかけられるようなことをした覚えもない。今朝のことを考えると姉ちゃんのことかもしれないとふと頭をよぎったが、そのことでわざわざボク個人に話しかけてくるとは思えなかった。

「今日の放課後、空いてるかな? むりなら、明日でもいいんだけど」
「空いてるよ。ボクに何か用?」
「うん。ちょっと、ね。そのまま空けておいて欲しい。放課後この教室で、先生も交えて話したいことがあるんだ」
「先生と?」

 ますます訳が分からない。先生と話すことなんてあったかな。一応ボクは優等生で通しているし、真白の件ならいちいち学級委員やら担任教師やらと話さずに一気に『そういう』機関に連れて行かれるだろう。

「わかった。で、何を話すの?」
「それは……」

 カシェはボクのそばにいるゼノを見た。なるほど、聞かれたくない、か。
「休み時間が無くなるから、ボクたちはもう行くね。行こう、ゼノ」

 返事も待たずに歩き出すと、ゼノはボクについてきた。後ろから、緊張が緩んだような溜め息が聞こえた気がした。

「どこで食べる?」
「えっと、裏の森の、あそこ」
「わかった。なら、ちょっと急ごうか」

 入学したての同クラス内ではあまり知られていないが、裏の森には休憩所のような場所がある。森の向こうに移動するときや図書館に行くときに使う道からはやや外れているため、多くの生徒が見落としている穴場だ。それに、あそこに行くには道なき道を歩くことになるし、何より遠いから、あそこを知っている人もあまり来ない。ボクらだって人のことは言えない。あそこで食べるよりは屋上なんかで食べることの方が多いのだから。

 正面玄関から校舎の外へ出ると、『四季の木』周辺に人が集まっていた。賑やかな昼食の時間を楽しんでいる。でも、ここ最近冷えてきたからかいつもより人の数が少ない。昼食を終えてそそくさと校舎に入っていく人がいるのも、ちらほら見える。

「アサヒ、さムくない?」
 ゼノは〈コールドシープ〉という種族で、北国出身らしく、寒さに強いらしい。その代わり、夏は基本バテていた。
「平気だよ」
 ボクは感情が欠落している。寒いも暑いも、認識はするけど『感じない』。寒いとは思うけど、だからと言って何も無い。

『平気』。その言葉に、嘘はない。

 校舎から離れるにつれて、人通りも少なくなり、やがて一人も通行人を見なくなった。ボクらは整地された道を外れて、がさがさと草を分ける。だけど別に全く道がないとかではなく、草が踏まれた跡が道の役割をこなしているのだ。非常にうっすらであるのと、周りの風景と同化しているのとで、見えにくいだけで。

「ふぅ」
 ゼノが息を漏らした。目的地に到着して、無意識に出たものだろう。疲れたというような表情はしていない。怪物族だからか、体力なんかはかなりあるということを、しばらく一緒に過ごしてみて知った。

 そこは、綺麗な場所だった。

 木漏れ日が森の中を優しく照らし、金色の光を反射させる白のガゼボを浮かび上がらせている。ガゼボにはつるが巻きついていて、空色の蕾をつけていた。
 周りの風景も合わせて、まるで一つの芸術作品であるかのように、そこに存在していた。

 そこに、見知った影が一つ。

「姉ちゃん?」

 静かに存在を主張する美しい金の髪が、ふわりと揺れた。冷たい空気が髪をやわらかになびかせ、振り向いた姉ちゃんの横顔を露わにする。
 隣でゼノが息を止めたのを感じた。ぎゅっと拳を握りしめ、体を強ばらせているのがわかる。

 なんの感情も浮かばない、虚ろな白眼がボクを捉える。

「どうしてここにいるの? ほかの三人は、今日は一緒じゃないんだね」

 昨日までに帰って来なかったことについて文句でも言ってやろうと思ったけれど、やめた。そんなのどうでもいいや。ボクは走り寄って姉ちゃんの横に腰掛ける。

「龍馬は、登校してない。蘭は先生から呼び出されて、スナタから『たまには別々で食べよう』って言われた」
「そうなんだ。じゃあ、ボクたちと一緒に食べようよ!」
 姉ちゃんは数秒止まった。多分、ボクの口から「ボク『たち』」という言葉が出たことと、ゼノの意志を確認せずに言ったことについて考えているのかな。

「ね! ゼノもいいよね?」

 ボクがゼノを見ると、ゼノは一瞬固まって、そしてブンブンと首を縦に振った。
「ならおいでよ。座って食べよう」
 ボクが駆け出した時に居た場所から全く動かないでいたゼノに声をかけると、ゼノはあわてて駆け足でガゼボに近寄った。そして大回りをして、姉ちゃんがいる場所とは正反対の入口から中に入り、三十センチほどの間隔を空けてボクの隣に座った。

 ゼノの手は小刻みに震え、表情は未だに硬い。そんなに緊張しなくてもいいのにな。
「ああ、そうだ。姉ちゃん、紹介するね。ボクの友達の、ゼノイダ=パルファノエ。姉ちゃんのファンなんだってさ」
「アサヒ?!」
 ボクが言うと、ゼノは弁当箱を開けようかとまごついていた手を滑らせて、危うくそれを落としそうになった。間一髪で拾ったようだから、大事は起こってない。

「ファン?」

 姉ちゃんが首を傾げると、ゼノがアワアワと口を開く。
「あっそノ。えっと、えッと!」
 しばらく見ていると、息もまともに吸えていなかったようで、喉に手を当てて小さく咳き込み始めた。ゼノが先に何かを言うのを待っていた姉ちゃんだったけれど、見かねたのか、口を開く。

「貴女のことは、覚えている」

「アッ」

 ゼノは突然立ち上がり、姉ちゃんの前に移動して、深々と頭を下げた。大柄であることを気にし、膝をついて、頭の位置が姉ちゃんの頭よりも低くなるようにして。まるで土下座のような格好だ。
「先ジツは、失礼しました!」

 先日? 姉ちゃんとゼノは、面識があったのか?

「怒ってないし、その事でもない」
 姉ちゃんはベンチから降りて、ゼノの顔を覗き込んだ。
「服が汚れる。とりあえず、立って」
 至近距離に姉ちゃんの顔が来たゼノは顔を真っ赤にして、勢いのままに立ち上がった。少し頭がふらついている。
「私が言ったのは、貴女自身のこと。貴女が入学した時のこと、貴女がここに入学した理由、それから、ある程度の経歴。私も貴女と同じように、貴女に興味を持っていた。一番興味があったのは、貴女の姉であるけれど」

「わたしと、同じヨウに?」
「正確に言うと、思い出した。貴女の名前と顔と、それから〈呪われた民〉の本を大量に読み漁るというその行動を、どこかで確認した覚えがあった」
「そう、ナんでスね」
「〈呪われた民〉についての知識は、既に脳に蓄えがあるはずなのにまだ調べているということは、それは姉ではなく私に関することと予想した。何年も経ったいまでもそれを続けているとは思わなかった」
「それは、ソノ、なんトナく、習慣づいてしまって」

 もじもじと手を動かして視線を泳がせるゼノに、姉ちゃんは続ける。

「貴女が朝日と知り合いということには、正直驚いた。だけど、朝日の友人が貴女であることは、嬉しい」

 そして姉ちゃんは、表情を変えた。冷たい瞳はそのままに目を細め、口で弧を描いた。微笑んだ。
 花のような、しかし華のようではなく。言い表すなら、百合、そして、向日葵。聖女のような清らかさと、太陽と形容するほどの眩しさは無いもののそれと同様の暖かさを持った、微笑だった。

 息が、止まった。脳が耳から入る音を一切認識しなくなる。
 重くも軽くもない静けさの中、姉ちゃんの声だけが、涼しげに響く。

「朝日を、よろしく」

 心臓が、どくどくと音を鳴らす。周りは静寂ではあるものの、さわさわと、草木が擦れ木漏れ日が揺らめく音がする。
 時間が止まったのは、ほんの数秒のことだった、
 ゼノも顔を真っ赤にして、口を開けたり閉じたりしている。
「ひゃい……」
 絞り出した言葉は、なんとも情けないものだった。

 4 >>274


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。