死にたがりの私

作者/桜

―1章― 1


「キャハハハハッ!!」

下品な笑い声。

笑われているのは私。

泥まみれの私。

私は、笑い声をあげている子達の中心にいる。

つまり、囲まれている。

カランッ

バケツを床に投げつけた音。

カランッ、カランッ、カランッ

立て続けに鳴り響く、バケツの音。

「じゃあ、次はこれとかどう?」

クラスの中心的存在の子がそう言い、あるモノを取り出した。

あるモノ……、ライター。

「いいんじゃない?面白そうだし♪」

クラスメイトの誰かが言った。

名前なんて、誰1人覚えていない。

……誰1人は間違いか。

覚えている名前、『九重 穂乃実(ここのえ ほのみ)』

私の名前。

「太股がいいんじゃない?目立たないしさぁ~」

「そうね!じゃあ、始めるよ♪」

カチッ

火が、私の太股に近づく。

太股に痛み。火傷。

「痛い~?」

痛い。心が痛い。

苦しい。

「ねぇ、何か言いなよ?ムカつくんだけど」

私は無表情。

でも、心の中は荒れている。

苦しくて。辛くて。哀しくて。

この感情を殺している。

顔には出さないように。

「穂乃実、無感情だからいじめられるのよ?」

私は、無感情じゃない。

心の中で、色々な感情が混じり合っている。

顔に出さないだけ。

怖くて、怖くて。