死にたがりの私

作者/桜

―6章― 6


鐘が鳴る数分前に蓮華が教室に戻ってきた。

顔を俯け、黒板を見ないようにしながら。

私は山本さん達を黒板に書いた悪口を消していた。

一応、いじめは先生とかにばれないのが鉄則。

私が勝手に思い込んだいるだけなんだけど。

全て消し終わると、皆は鐘が鳴る前に席に着いた。



少し白くなった黒板を眺めながら、思う。

消すぐらいなら、書かなきゃいいのに。

蓮華もいなかったんだし。

けれど、口に出したりはしない。

黒板に皆で悪口を書き、皆で消す。

クラスの結束が高まるのかな?

私にとっては良い事か。

私も加害者だし。



担任が鐘が鳴って数秒後に入ってくる。

皆に何か言っているが、私は聞いていなかった。

多分、いつもの朝の報告。

断片的に聞こえる言葉から予想できる。

……眠い。

家じゃなくてもいいから寝たい。

私は机に突っ伏した。





担任が出て行った音がしたので、顔を上げ、蓮華を横目で見る。

顔を俯けて、じっと自分の机を見続けている蓮華。

私の親切心を拒んだ蓮華。

偽善だったから、しようがないか。

受け入れられても困るしね。





あー、早く席替えしたい。

蓮華から離れたい。

近くにいると、私も標的になりそうだから。

……あの言葉の方が標的になりそうか。

『助けてあげようか?』

クラスメイトに聞かれていたら、今頃私はどうなっていた事か。

答え。私が標的。裏切者のレッテルがはられる。

そんな事、馬鹿でも分かる。

それなのに、あの時の私は、何も考えていなかった。

私は馬鹿より頭が悪いって事か。

そう考えると、昔言われた『ゴミ以下』は正しかったって事か。

自分を罵倒すると、何故か安心する。

別に、マゾな訳じゃない。

自分を卑下すると、自分に嘘をつかなくていいんだって思えるから。

もう私は、本当の私なのだから。