死にたがりの私
作者/桜

―4章― 1
私は、目を覚ました。
白い天井。
薬のにおいが充満している空気。
ここは、病院だ。
私は死ねなかったんだ。
嬉しさと哀しさが、私の中で混じり合う。
「お父様、お母様、目を覚ましましたよ!」
看護師の甲高い声が私の耳へ届く。
ドタドタと、足音が聞こえる。
私の視界に、父と母の顔が入ってきた。
「穂乃実、心配したんだぞ……」
「目を覚ましてくれて、良かった……」
父と母が、涙を流しながら言う。
両親の涙が、私の頬に落ちてきた。
温かい、両親の涙。
愛を感じない、両親の心。
――――――――――――――――――――その涙は、本物?
それは、心配しているふりじゃないの?
心の底から思っている?
『私が助かって良かった』と。
きっと、嘘だよね。
私なんか、どうでもいいと思ってるよね?
私の自殺で泣いたりしないよね?
心から喜ぶよね。
これでガラクタがいなくなった、てね。
その涙の意味は何?
私を心配しているふりをしている理由は何?
私を心配してどうするの?
心配して、またもと通りの生活?
愛のない生活?
嘘で出来た生活?
私は、信じられなかった。
何もかもが、信じられなかった。
両親も、姉も、クラスメイトも、全てが。
全てが、騙されている私を嘲笑っているような気がして。

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