死にたがりの私
作者/桜

―6章― 10
朝起きて、朝食を摂って学校へ。
何も変わらない日々。
けれど、今日は少しだけ違う。
教室は、いつもより騒がしかった。
『何これ!』『誰!?』
そんな言葉が聞こえる。
勿論、心の机を囲んで。
「誰よ!こんなにしたのは!」
心の声がする。
「私、放課後、蓮華が教室に入る所見たよ」
……春菜の声がする。
春菜は、堂々と嘘をついた。
「昨日、忘れ物して取りに行ったら、教室に蓮華が入る所を見たの」
春菜は、蓮華に罪を着せた。
皆、蓮華の方を見る。
多分、蓮華にも今の話は聞こえている。
けれど、何も言わない。
いや、言えないのか。
「………」
無言で蓮華に近づく心。
手にはボロボロにされた教科書。
蓮華は逃げもせず、椅子に座ったまま、ただ震えていた。
「……ねぇ、蓮華。何でやったの?」
低い声。怒りを押し殺している声。
「……え?」
多分、今の蓮華の言葉で、心の何かが消えた。
「とぼけないでよ!」
バシッ、という音が教室に響いた。
心が教科書で蓮華を殴った音。
蓮華は椅子から落ち、床に手をついている。
心は床に落ちている曲がったシャーペンを拾い、蓮華の顔に近づけながら言った。
「ねぇ、このシャーペンね、親友から貰った物なんだぁ。分かる?とっても大切な物なんだよ?千円じゃ足りない。1万だね」
蓮華は、訳が分からないとでも言うように、首を傾げた。
「だから、明日1万持ってきて!」
少し、間をあける。
「絶対ね」
心は、少し笑っていた。
心は蓮華から離れると、クラスメイト達に耳打ちした。
「あれ、本当は近くの文房具店で買った安物なの」
クラスメイト達も笑う。
私も笑う。
何が可笑しいのか分からないけど。
ただ、笑った。

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