死にたがりの私
作者/桜

―4章― 6
私は亜美をいじめた。
皆と混じっていじめた。
自分の身を守るために亜美を犠牲にした。
これでいいのに。
これで良かったのに。
哀しかった。
辛かった。
苦しかった。
心が痛かった。
私が自殺したら、いじめはなくなると思っていた。
そう信じていた。
けれど、何も変わらなかった。
強い人か弱い人をいじめる。
それが世界のルール。
いじめは一生なくならない。
放課後になり、私は教室を出た。
皆、亜美をいじめている。
私はもう、苦しみたくなかった。
いじめられている頃と、何も変わらない。
私は、ただ普通に生きて行きたいだけなのに。
いじめのない、平和な日常を送りたいのに。
世界は、私を許してはくれない。
私は、希望を持ってはいけなかった。
家に着くと、私はリビングへ向かった。
いつものように、母がリビングでテレビを見ていた。
「ただいま」
私は小さく言った。
テレビを消し、母が私の方を向く。
子を見るような目ではなかった。
何か分からないようなモノを見る目。
恐怖に染まった目。
「お、おかえり……」
震えた声で言った。
「お願いがあるの」
私は感情をこめないで言った。
「お願い?な、何?何でもするわよ?」
私の事を怖がっている母。
もう、どうでもいいか。
愛なんて、もう期待しない。
希望なんか、もう持たない。
「転校したい」
私はそう言うと、母の返事は聞かずにリビングを出た。
そして、家を出てあの公園へ向かった。
最後の公園へ。
公園には誰もいなかった。
携帯で時間を確認すると、18時だった。
辺りは薄暗い。
私はベンチに座り、さっき母に言った言葉を思い出した。
『転校したい』
母は叶えてくれる。
私の願いは全て叶えてくれる。
母は私の事を恐れているから。
母は、私の事なんか愛していない。
あの病院の涙は嘘。
全て嘘。
でも、もう愛して欲しいとは思わない。
もう、私に希望なんてないから。
私に、光なんてないから。

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