死にたがりの私
作者/桜

―2章― 5
私が最終的に着いた所。
名前の知らない公園。
人気のない公園。
静かで良い。
私はベンチに座り、乱れた呼吸を平常に戻した。
ここなら、私の知っている人は来ないかな?
もし来ても、逃げればいい。
そのまま、道路に飛び出して死んじゃえばいいのに。
それなら怖くない。
躊躇いもいらない。
だって、それは事故だから。
いっそ、自分から飛び出してみようか?
いや、無理だ。
そんな勇気はない。
死ぬと言えば、線路に落ちて電車にひかれるとか。
私の体は散らばって、駅を紅く染めるかな?
「……あれ?」
私の目から、突然涙が出てきた。
何泣いてんだろ?
ここは外だよ?
自分の部屋ならいいけど、外だよ?
何で泣くの?
……もう、我慢出来ないから。
今までの苦しみが、溢れ出てくるから。
私の苦しみは、もう我慢できないくらいに溢れている。
涙が止まらない。
小説とかなら、私の運命の人とかが声をかけたりするはず。
でも、それは小説。
現実であるはずがない。
誰も、私に声をかけてくれる人はいない。
誰も、私の事なんか気にしていない。
私に、味方はいない。
もし、私に気づいている人がいても、声をかけてはくれない。
見て見ぬふり。
面倒臭い事には関わらない。
それがこの現実。
鞄からハンカチを取り出し、涙を拭く。
涙は拭いても拭いても、消えない。
1度出てきてしまった涙は、中々止まらない。
――――――――死にたい。
何回も想った言葉。
『死』
前は、いじめられていなかったから言えた言葉。
昨日までは、怖くて出来なかった言葉。
そして今は、本気で言った言葉。
死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい。
頭の中で、巡る。
私は立ち上がり、歩きだした。
すぐそこの、アパートへ。
門を開けばすぐに入れるアパート。
防犯カメラもない。
ギシギシ軋む階段。
人が住んでいるか、疑いたくなるような古いアパート。
だからいい。
人がいると、嫌だから。
私の死体をさらしたくないから。
3階まで来た。
ここが一番上か。
下を見てみた。
意外と高い。
頭から落ちれば死ねるかな?
足から落ちたら死ねないよね?
どこから落ちるかが肝心。
私は、柵を乗り越えようと、柵に足をかけた。
体が傾いた。
天地がひっくり返ったような感じ。
私はバランスをとり、柵から離れ床のある所へ降りた。
そして、崩れ落ちた。
もう少しで落ちる所だった。
もう1回、下を見る。
落ちた時の私の姿が思い浮かぶ。
無残な姿。
何故、体が震えているの?
何故、あのまま落ちなかったの?
何故、死ねないの?
あの本気は、嘘の本気。
自分で自分に嘘をついていた。
私は死にたくない。
いや、死にたいけれど死にたくない。
怖いから。
私はアパートの3階の床に崩れ落ちたまま、何時間もいた。
私は何がしたかったんだ?
自分は死ねないと言う確信を持つための実験?
そう、実験。
死ねないのを、分かっているのに。
神様は私を死なせてはくれない。
なら、どうすればいいの?
私は、どうすればいいの?
どうすれば、私の未来は変わるの?
どうすれば、私は幸せになれるの?
どうすれば……?
それより、
私の未来はあるの?

小説大会受賞作品
スポンサード リンク