死にたがりの私

作者/桜

―5章― 10


いつもと同じなのに、まったく授業に集中できない。

何で?

そんなの決まってる。

蓮華が排除されたから。

排除=いじめ、じゃないよ?

いじめはいじめる人が悪い。

けれど、排除はいじめられる人が悪い。

私はそう、認識した。

いや、させた。

自分を正当化するために。

……自己暗示って難しいんだね。

完全にそう思えない。

自分が悪いのではないかと、疑ってしまう。

多い方が正しい。

強い方が正しい。

そんなの、この世界の常識。

強い者が弱い者を従える。

それが当たり前。

だけど、これは?

この教室には、強い弱いなんてあるの?

……ないよね?

そう、信じたい。





放課後。

教室には、クラスメイトが数人残っている。

「じゃあ、また明日」

私は残っていたクラスメイトに手を振り、教室を出た。

けれど、すぐに学校を出るわけではない。

教室から少し離れた所で足を止める。

私が教室を出た数秒後、蓮華が出てきた。

私は誰も見ていないのを確認し、蓮華に声をかけた。

「助けてあげようか?」

蓮華の顔が、引きつった。

嬉しいような、哀しいような、そんな顔。

蓮華は、少し間を置いて、小さな声で言った。

「偽善者ぶらないで」

蓮華は、私から顔を逸らすと、小走りで私から逃げて行った。

まるで私が獣だという様に、必死で。

私は、蓮華の怯えた目と強気な言葉という組み合わせが変で、笑ってしまった。

ははっ、変なプライド。

無駄なプライド、の方が正しいかな?

まぁ、いっか。

蓮華の言葉は正解だし。

そう、私は偽善者なんだ。

心から蓮華を助けようだなんて思っていない。

誰にでも良い顔をする偽善者なんだ。

なら、もういいよね?

誰も親切にしてもらうのを望んでいないんだから。

もう捨てちゃっていいよね?

本来の自分に戻っていいよね?