死にたがりの私
作者/桜

―4章― 10
放課後。
いつもより授業が早く終わった感じがした。
時間は、いつもと変わらないけど。
放課後が来て欲しくなかったからかな?
「こっちこっち、もう始まってるよ!」
蓮華が私の腕をつかみ、引きずるようにして私を何処かへ連れて行く。
着いたのは、ありきたりの場所の体育館裏。
皆が春菜を殴っている。
躊躇いもなく、楽しそうに。
「私達もやろ♪」
蓮華は、笑いながら春菜の腹を蹴った。
春菜がお腹を押さえて蹲る。
けれど、春菜への暴行は続く。
「ほらほら、穂乃実もやりなよ?」
蓮華が私を無理やり春菜の前へ連れて行く。
抵抗はしなかったけど。
「楽しいよぉ♪蹴ってみなよ」
私は、思いっきり春菜の頭を蹴った。
春菜は短い悲鳴をあげ、後ろに倒れた。
「ね、楽しいでしょ?」
痛いだけだった。
春菜を蹴った、足が痛い。
自分の心が痛い。
「うん、楽しいね♪」
私は微笑んで、皆の中に入った。
そして、春菜への暴行を続けた。
何十分か過ぎた頃。
皆が帰り始めた。
「私もそろそろ帰るね。じゃあ、また明日!」
蓮華もそう言い、帰って行った。
蓮華が見えなくなった頃、春菜が悲鳴以外の声を発した。
「ねぇ、九重さん……」
涙を流しながら。
「助けて……」
そんな事を言った。
まだ残っていたクラスメイト達が次々に言う。
『助ける訳ないじゃん!』
『アンタに仲間なんていないんだよ!』
『助ける訳ないよねぇ?九重さん?』
「助ける訳がない。アンタは1人が似合ってるよ」
私は春菜を見下すような笑いを浮かべながら言った。
「……死にたい」
春菜が小さく、呟いた。
クラスメイト達が春菜へと、次々に言葉を放つ。
『ハハッ、じゃあ死ねば?アンタが死んで哀しむ人なんていないよ?』
『死ね死ね!早くこの世から消え失せろ!』
『目ざわりなんだよ。早く死ねよ!』
私は、何も言わずに春菜から離れた。
春菜の呟きが、聞こえていないフリをして。
春菜を私と重ね合わせながら。
私は家へ帰った。

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