死にたがりの私
作者/桜

―2章― 2
私は夢の事を頭から振り払い、制服に着替え、リビングへ向かった。
リビングには、母だけ。
父は会社で姉は部屋。
いつもの風景。
私は椅子に座り、朝食を食べようとした。
ズキッ
昨日蹴られたところが痛む。
私は顔を歪めた。
「穂乃実、どうしたの?」
母の声。
「昨日、転んでぶつけた所が痛んで……」
私は、本当の事を言わなかった。
「そう」
母はそう言い、朝食を食べ始めた。
私も痛みを我慢しながら、朝食を食べる。
今、本当の事を言った方が良かったのかな?
本当の事を言ったら、助けてくれたのかな?
本当の事を言ったら、私は死なずにすむのかな?
本当の事を言ったら、私の未来は変わるのかな?
なら……、
「ねぇ、お母」
「あ、そうだ。今日近所のお母さん達と飲みに行ってくるから、帰ってくるのが遅くなる。ご飯は用意しておくから、レンジで温めてから食べてね。それと、お父さんも仕事で遅くなるから」
私の声が、母の声に遮られた。
「うん、分かった」
神様は、私に本当の事を言わせてくれないの?
別に、神様なんて信じてないけどね?
運が悪いと、神様のせいにする。
これって我儘?
「……穂乃実、何か言いかけなかった?」
神様は、本当の事を言わせてくれるんだ。
別に意地悪じゃないんだ。
「実は……、私学校で、いじめ」
「あ、ごめん!もう買い物へ行かなくちゃ!」
母は急に立ち上がり、リビングを出て行った。
時計を見る。
いつもは、買い物へ行かない時間。
まだ早い時間。
まるで、私の話から逃げたかのよう。
ねぇ、母は何で私の話を聞いてくれないの?
とても重要な話なのに。
私の生死に関係する話なのに。
やっぱり、神様は意地悪ね。

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