死にたがりの私
作者/桜

―3章― 10
私は立ち上がり、浴室を出た。
亜美は何も言わなかった。
ただ、天井を見つめていた。
亜美の家を出た。
皆の視線が私へ向けられる。
ずぶ濡れだからかな?
今日、雨は降ってないしね。
私は気にしなかった。
他人の視線なんて、どうでもいい。
私の評価がどうなっても、もう関係ない。
私は、消えるのだから。
また、涙が出てきた。
ハンカチは出さず、袖で拭いた。
家へ着いた。
ドアを開け、家の中へ入る。
母は、玄関には来ない。
私の事を心配しているふりの母は、もう来ない。
私が引きこもりになったら、来なくなった。
別に、来て欲しくないけど。
けれど、少し期待していた。
私の事を、どれほど大切にしているか知りたかった。
私の事なんて、どうでもいいみたい。
例え死んでもね?
自分の部屋へ入り、鍵をかける。
鍵をかける意味は、あまりないけど。
私に用がある人なんていないのだから。
私は、必要とされていないのだから。
ベッドに横になり、声を押し殺して泣いた。
頭まで布団をかぶり、枕を顔にあてて。
自分の死を思い描きながら。
今までの思い出を振り返りながら。
夜になるのを待った。
自分の死が、少しずつ近づいているのを感じた。
だから泣いた。
涙が枯れ果てるまで。
自分の死を哀しんで。

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