死にたがりの私
作者/桜

―3章― 7
華麗に死ぬ。
悲劇的に死ぬ。
同じ意味。
私は、普通な死は嫌。
……苦しみながら生きていくのは嫌、という屁理屈か。
私は、苦しみたくないんだ。
死にたいけど、苦しみたくない。
死ぬなら、苦しむのは当たり前。
睡眠薬を大量に飲むなら、別だけど。
「嫌……、こないで……」
亜美の震えた声。
少しずつ、後退り。
私は亜美少しずつ、近づく。
笑みを浮かべたまま。
トン
亜美の体が、浴室の壁に当たる。
もう、逃げられない。
追いつめている気はないけど。
「ねぇ、亜美ぃ?」
私は、ゆっくりと亜美の頬を撫でる。
まるで、我が子のように、愛おしそうに。
「な、何……」
ドタドタ
亜美以外の他の子達が、浴室から出て行く。
私は気にせず、亜美に顔を近づける。
「ねぇ、何で私を殺してくれなかったのぉ?」
ポタ……
浴室の床に、私の涙が落ちた。
ポタポタポタ……
あぁ、分かった。
この笑みは、哀しみの笑みか。
私は、もうすぐ死ぬから、最後は笑っていようと。
普通の人ならしない行動。
私は、狂った人だから。
死にたい、と思った時から何かが壊れ始めたのかな?
1つ崩れたら、全て崩れる。
積み木と同じ。
バシィンッ
浴室に、乾いた音が響いた。
2回目の、頬の痛み。
良く響いたな。
痛いけど、こんな痛みでは死ねない。
亜美は私から離れ立ちあがり、怒鳴った。
「アンタ、さっきから何様のつもりなのよ!アタシが下手に出たと思ったら、急に偉そうにして!ムカつくのよ!」
何回も、何回も足で私の腹を蹴る。
息が苦しい。
呼吸が乱れる。
そして、亜美の足が私の後頭部にのせられる。
「あぁ、もうムカつく!あの写真、裏サイトに載せるから!アンタが悪いのよ!アタシに逆らうから!」
最後に、私の顎を蹴った。
私は浴室の床に、力なく横たわった。
亜美は、浴室を出て行ってしまった。
「アハハ……、私、何やってんだろ……?」
涙が静かに流れる。
私の涙を止めてくれる人は、この世に存在しない。

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