死にたがりの私
作者/桜

―5章― 4
何分か経つと、蓮華達が教室に入ってきた。
「穂乃実、おはよ」
蓮華は私にそう言い、春菜の机に近づくと、机を思いっきり蹴飛ばした。
蓮華は春菜の机を見下ろしながら笑った。
「フフッ、ストレス解消♪」
私は、春菜の机を見ているだけだった。
直せない。
直したら私が標的になってしまう
皆がいつものように、黒板に春菜の悪口を書き込む。
蓮華は黒板に大きく『春菜死ね』と書いた。
ありきたりな悪口が黒板を埋める。
『死ね』という言葉が並ぶ。
ありきたりだけど、苦しめる言葉。
私はこの世に存在していいの?と疑ってしまう言葉。
でも、本当に春菜の死を望んでるの?
春菜が死んだら、皆はどうなるの?
いじめがばれたら、皆はどうするの?
いじめは犯罪だよ?
例えこの手で殺していないとしても、私達がした事で春菜が死んだら?
私達は犯罪者になるよ?
それなのに、何故春菜の死を望むの?
私は、皆が黒板に春菜の悪口を書きこむのを、ただ黙って見ていた。
傍観者でも、いじめの加害者。
そんな事知っている。
いじめにかかわっている人は、皆加害者。
でも、助けた人に裏切られたら?
自分で自分の首を絞めて、馬鹿じゃないの?
だから助けない。
だから標的が変わらない事を祈る。
例え、自分を苦しめても。
春菜が来た。
倒れた机を見て、哀しそうな顔をする。
そして、机を無言で直す。
机を直している春菜に、蓮華がゴミをかける。
春菜は、ただ耐えている。
春菜の目が、黒板に向く。
春菜はゆっくりと、黒板の字を消す。
私は、それをただ眺めているだけだった。

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