死にたがりの私
作者/桜

―2章― 1
笑っている。
皆笑っている。
私も、皆も。
これは何年前の事かな?
『ねぇ、穂乃実』
この子は誰だったか?
顔は見た事があるけれど、名前が思いだせない。
まぁ、いいか。
「何?」
『一緒に遊ぼうよ♪』
その子が、満面の笑みを浮かべて言った。
「いいよ」
私は、感情のこもっていない声で返す。
『じゃあ、これで遊ぼぉ?』
その子は、気にした様子もなく、ポケットの中に手を入れる。
「何で遊ぶの?」
『これだよ♪』
その子が取りだしたのは、ライター。
「え?」
『穂乃実で遊ぶの♪動かないでねぇ?』
ライターで、何をするの?
私で遊ぶの?
私を、どうするの?
……私を、火であぶる?
私が気づいた時には、皆に囲まれていた。
皆、笑っている。
さっきまでの笑顔とは違う。
どす黒い笑顔。
私を痛ぶるのに、何の抵抗もない笑顔。
『ねぇ、始めるよぉ?』
あぁ、思いだした。
昔、何回も見たのに。
この顔は……、
………。
私は、飛び起きた。
目には、涙の痕が。
何、この夢は?
何で、あの人が出てくるの?
夢まで私を痛めつけるの?
私の心が安らぐ場所はないの?
何で、何であの人が?
何で、姉が出てくるの……?
何で姉が私をいじめるの?
……でも、これは夢。
とても鮮明に覚えている。
あの、姉の笑顔。
私が今まで1回も見た事がない笑顔。
歪んでいる笑顔。

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