死にたがりの私
作者/桜

―5章― 1
私が転校してから、約1ヶ月が経った。
何も変わっていない。
皆、春菜をいじめている。
私も一緒に。
罪悪感があると言うけれど、それはもしかしたら、嘘かもしれない。
罪悪感があると言う事で、自分は悪くないのだと。
自分は正しいのだと。
そう、思い込んで。
私のクラスには、亜美の様にリーダー的な存在の子はいない。
皆、仲が良い。
……春菜を除いて。
だから標的が変わらない。
ずっと、春菜のままでいる。
私は、ホッとしてしまった。
自分の番は、こないのだと。
前、私は春菜に、変な事を言ってしまった。
『死にたいんなら、死ねばいい』と。
私は、春菜は本気で死にたいと思っていないと分かっていた。
だって、自分が体験したから。
自分自身の様に、春菜の心が良く分かる。
けれど、私は春菜を救いたかったわけじゃない。
あの言葉の意味は、
『死にたいんなら、死ねばいい』=『死ぬな』
春菜に生きていてもらい、私が標的にならないように。
ずっと、春菜が標的でいてくれるように。
そんな事を思って言った。
私は、春菜を救うような、綺麗な人間じゃない。
どす黒く汚れた人間。
生きていてはいけない人間。
私には、生きる権利などないのに、私は生きている。
死にたいと口では言うけれど、死ねないから。
春菜と一緒。
怖くて死ねない。
私の言葉通り、春菜は生きてくれた。
今も、私の為に生きてくれている。
今は放課後で、いつも通り体育館裏でいじめ。
今日はバスケットボールを春菜に当てている。
「はい、穂乃実の番だよ♪」
蓮華が、ボールを私に渡してきた。
私は、思いっきり春菜に投げた。
私のボールは、春菜の顔に当たり、春菜の鼻から血が出てきた。
それでも、皆は止まらなかった。
何回も何回も春菜にボールが当たる。
痛みで歪んだ春菜の顔。
私はその顔を見て、
『ごめんなさい』
と言いそうになった。
私は、偽善者だ。

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