死にたがりの私
作者/桜

―3章― 2
気持ち悪くなるような悪臭。
悪臭というよりは、不快感。
沢山の人がいるから。
外なんて行きたくなかった。
けれども私は、そのまま歩いた。
私と同じような人を探して。
1時間、2時間。
それだけ探してもいない。
当たり前か。
そんなにいないよね、死にたい人なんて。
私は今日は諦めて、家へ帰ろうと進行方向を変えると、
「あぁ~、穂乃実だぁ~!」
背後から、大きな声がした。
そして、肩を叩かれた感触。
皆の視線が私に集まる。
私の名前を叫んだ人にも。
私は直感した。
これは逃げた方がいい、と。
私の身が危険にさらされる、と。
私は逃げようとしたが、逃げられなかった。
足に力が入らなかった。
怖くて、怖くて。
逃げたら今度何されるか分からなくて。
分からないから怖くて。
私はゆっくり、後ろを向く。
私の後ろにいた人は私をいじめている人達のリーダー。
私の勘はあたっていた。
これは、逃げた方が良かった。
「いい所で会ったねぇ?アタシ、今暇なんだぁ♪アンタが最近いなくて、学校つまんないんだよ?どうしてくれんの?」
気持ち悪い笑顔を浮かべている。
「ねぇ、どうしてくれんの?」
「………」
私は、何も言わなかった。
いや、言えなかった。
恐怖で体が震え、声が出なかった。
「まぁ、今までの事は、今からやる事で水に流してあげる。私の家、今誰もいないんだぁ♪だから一緒に遊ぼうよ♪友達も呼んでさ?」
私は運が悪い。
何で家を出たのだろう?
こんな事、分かっていたのに。
日曜の午後、私の知っている人が街にいるのを分かっているのに。
何でだろう?
淡い希望を目指して?
結果が良ければ全て良いの?
私は腕を引っ張られ、引きずられるようにその子の家へ連れていかれた。
私に、抵抗する勇気はなかった。

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