死にたがりの私

作者/桜

―2章― 7


ドンドンドン ドンドンドン

姉の部屋のドアを力いっぱい叩く。

「お姉ちゃん!!!!お姉ちゃん!!!」

私の目からは涙。

涙が止まらない。

今日はよく泣く日だね。

………。

いくら叩いても、ドアは開かない。

返事すらもない。

姉は、私の仲間じゃないの?

私は、そう感じてきた。

私の仲間はいない?

嫌……。

そんな現実は嫌。

それが本当なら、私はどうすればいいの?

……考えてもしかたがない。

私は、止めていた手を動かし始めた。

ドンドンドン ドンドンドン

最初のように、力強さはなく。

弱弱しい音。

私の感情が表れている。

「お姉ちゃん……、助けて、助けてよ……。私には、お姉ちゃんしかいないの……。ねぇお姉ちゃん……、私、いじめられてるの。お姉ちゃんなら分かるでしょ?いじめられる人の苦しみが……。お姉ちゃんも体験したでしょ?いじめられたでしょ?ねぇ、お姉ちゃん、助けて……。お姉ちゃんは私の仲間だよね……?私の仲間になってくれるよね……?ねぇ、お姉ちゃん……」

嗚咽混じりの私の声。

涙で歪んだ私の顔。

「お姉ちゃん……」

ドン

私は最後の1回を叩いた。

何で出てきてくれないの……?

その時、ドアが開いた。

私は床に蹲っていたので、姉を見上げる形になった。

5年ぶりの姉の姿。

ガリガリに痩せ細り、目だけに力がある。

昔の面影は少しだけある。

けれど、昔の優しげな笑みは、あとかたもなく消えている。

姉の顔に、表情はない。

私を、まるで地面にある小石のように見つめる。

「……いじめられてるの?」

5年ぶりの姉の声。

小さいけれど、よく透る声。

「……、助けて……」

私の感情が、もう、もとに戻らないぐらいに外に漏れる。

私の感情は、止まらない。

「お父さん、お母さんは助けてくれないの……。私に仲間は、お姉ちゃんしかいないの……。ねぇ、お姉ちゃん、助けてくれるよね?お姉ちゃんは、私の仲間でいてくれるよね?」

姉の顔は……、




―――――――――――――歪んだ。





「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!」

突然、笑いだした。

何、何なの?

「アハハッ!私が仲間ぁ?ありえない!私が仲間になる訳ないじゃん!それに、父さんと母さんが助けてくれない理由、分かる?」

姉は、私の返事を待たずに続ける。

「私が原因だよ!私が引きこもりになって、疲れたんだよ!もう、いじめなんて嫌なんだよ!現実から目を逸らしているんだよ!アハハッ!その私に助けろぉ?ありえないよ!」

痛めつける、姉の言葉。

何でそんな事を言うの?

姉は、こんな人だったの?

「アンタに仲間なんて存在しないんだよ!」

姉はそう言い、ドアを閉めた。

私は、床に蹲ったまま。

メール、姉の言葉。

『アンタに仲間なんていないよ』

『アンタに仲間なんて存在しないんだよ』

仲間……。

……仲間って何?

私を助けてくれる人?

私のためなら、何でもしてくれる人?

私の事を1番に想ってくれる人?

……私をただ見守っている人?

何なの?

仲間って何?

私は自分の部屋に駆け込み、ベッドに飛び込んだ。

仲間、仲間、仲間……?

私に、仲間はいる?

……いない。

信じていた姉に、裏切られた。

いや、姉は裏切っていない。

私が勝手に信じていただけだ。

私はこの言葉を聞いたことがある。

『人間は1人では生きていけない』

今の私は1人。

なら、生きていけない。

でも、死ぬ勇気もない。

なら、どうする?

何もない私に、できる事は何?