死にたがりの私
作者/桜

―5章― 5
「皆さん、おはようございます」
チャイムと同時に教室に入ってくる担任。
担任は教室の前へ来ると、声のトーンを下げて言った。
「このクラスには、いじめがあるのですか?」
教室が急に静かになった。
隣の蓮華を見てみる。
蓮華は、春菜の事を鋭い目つきで睨んでいた。
蓮華だけではない。
教室を見回してみると、皆が春菜を睨んでいる。
私を除いて、全員。
私も、皆に合わせて春菜を睨む。
担任は、そんな私達の様子を見て、溜息をついた。
「いじめはいけない事です。分かっているでしょう?それなのに、何故いじめをするのですか?」
担任の問いかけに答える者はいない。
担任はまた溜息をつき、言った。
「いじめのリーダーは誰ですか?」
いじめのリーダー?
リーダーなんていない。
全員でやっていた事だから。
けれど、皆の視線は1人に向かっている。
皆の視線は、蓮華に。
担任も蓮華を見る。
「え……?」
蓮華は驚いた顔をしながら、皆を見回す。
「ちょっと、皆だっていじめたじゃない!」
蓮華は手を握りしめながら言った。
裏切り。
そんな言葉が私の頭の中に浮かんだ。
蓮華、貴方は裏切られた。
心が手を上げ、こんな事を言った。
「私達は藤川さんに命令されてやりました」
命令なんてされてない。
こんなの嘘だ。
けれど、皆は口々に言う。
『蓮華に』
蓮華を悪者に仕立て上げ、自分を守る。
何故皆は、そう簡単に人を傷つけられるのですか?
自分のためだからですか?
誰かを犠牲にしてでも、自分を守りたいのですか?

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