死にたがりの私
作者/桜

―5章― 6
担任は、口々に『蓮華に』と言う私達を見て、また溜息をついた。
「そうなのね、皆は藤川さんに命令されて坂本さんをいじめたのね?」
「え……?」
蓮華が驚いた顔で担任を見る。
担任は、気にせず言葉を続ける。
「藤川さんと坂本さんは喧嘩をした。藤川さんは、皆の同情を集めるような事を言い、仲間にさせた。そして、坂本さんをクラス全員でいじめた」
「ち、違うっ!」
蓮華の声が、教室に響いた。
「正直に言った方がいいわよ?」
「私だけじゃない!」
蓮華の涙は、机を濡らした。
担任に何を言ったって、無駄。
担任は、もう決めつけている。
リーダーは、蓮華だと。
悪いのは全て蓮華だと。
これで、春菜は救われた?
蓮華が裏切られるのを見て、楽しかった?
私は、こんな事をしたかったの?
……違う。
私はただ、いじめのない平和な日常にしたかっただけ。
誰も助けない。
ただ、見ているだけ。
犠牲になる人がいても、自分が守れればどうでもいい。
皆、そう思って裏切ったの?
そんなの、正気じゃない。
皆、狂ってる。
これには、私も入る。
私も、皆に合わせたから。
蓮華を裏切ったから。
これで、良かったの?
「……私が、やりました………」
蓮華が、か細い声で言った。
違う、蓮華だけじゃない。
「そう、やっと白状してくれたのね」
違う、皆でやった。
「じゃあ、仲直りしようか。藤川さん、坂本さん、前に出て」
蓮華と春菜が前に出る。
「藤川さん、坂本さんに謝りなさい」
「ごめんなさい」
蓮華が、泣きながら言った。
「さぁ、これで一件落着ね。2人とも、自分の席に戻りなさい」
2人が自分の席に戻ると、担任は何事もなかったかのように、今日のお知らせなどを話した。
何事もなかったかのように、ね。

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