死にたがりの私
作者/桜

―4章― 4
「穂乃実もやろうよ♪」
皆が私を亜美に近づける。
亜美は目の前。
「穂乃実も蹴ってよ。今までいじめられて憎いでしょ?」
貴方も同じ、全てが憎い。
私をこの世に産んだ、母さえも。
私はそう思ったが、口にはしなかった。
「憎いよ。これは、自業自得だね?」
私は、亜美に微笑んだ。
偽りの微笑み。
そして私は、亜美を蹴った。
思いっきり、亜美の腹を。
亜美が痛みで蹲る。
他の子達が一斉に蹴る。
笑い声が教室に響く。
私もただひたすら蹴り続けた。
「や、やめて……」
小さな、前の亜美のような力強さはなく。
涙を流しながら、私に懇願してきた。
『助けて』と。
「許してくれたんでしょ……?あの病院で言ったよね……?」
私は笑みを浮かべたまま、亜美に顔を近づけた。
「じゃあ、貴方を助けてあげる」
「……え?」
亜美の顔に、希望が見えた気がした。
「嘘だけどね」
亜美の顔が凍りついた。
私は亜美の顎を蹴り、笑った。
「私が貴方を許す訳ないでしょ?ましてや、助けろだって?頭大丈夫?あんなのに騙されるなんてゴミ以下ね」
私は亜美から離れ、自分の席に座った。
私の席の周りに、病院に謝りに来た子達が集まってきた。
「……私達は許してくれる?」
「お願い、許して……」
『許して』を繰り返す。
私は微笑み、頷く。
「許してあげる。亜美だけは許さないけどね?」
私の席に集まってきた子達は、安堵した様子でまた亜美をいじめ始めた。
私は、分かった気がした。
いじめられている人を助けない理由を。
自分自身が大切だから。
他人より、自分の方が大事。
それは、誰にでもある考え。
そう、私にもある。
生贄交代。
亜美をいじめれば、私はいじめられない。
これが私の光?
私が飛び降りたから、こうなった。
なら、良かったんだ。
私の選択は合っていた。
私が助かれば、それでいい。
例え、誰かが犠牲になっても。

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