ダーク・ファンタジー小説

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この馬鹿馬鹿しい世界にも……
日時: 2020/11/23 12:28
名前: ぶたの丸焼き (ID: QxkFlg5H)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12919

 初めまして、ぶたの丸焼きです。
 初心者なので、わかりにくい表現などありましたら、ご指摘願います。
 感想等も、書き込んでくださると嬉しいです。

 この物語は長くなると思いますので、お付き合い、よろしくお願いします。

 え、嘘、閲覧回数が……! ありがとうございます! まさかこんなに早く三桁に届くとは! ぶた感激です!
 ≪目次≫

     第一幕

 0,1 >>01 2   >>02
 3   >>03 4   >>04
 5   >>07 6   >>11
 7   >>12 8   >>13
 9   >>14 10  >>15
 11  >>18 12  >>19
 13  >>20 14  >>21
 15  >>22 16  >>23

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Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも…… ( No.19 )
日時: 2020/11/22 11:56
名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: II6slNHe)

12

 魔法実技の授業が始まった。出席番号順に行われるので、私は18番目だ。
 リュウは比較的始めの方に行う。出席番号は、確か6番だっけ。
「次、6番、笹木野 龍馬」
 合ってた。
 今回の魔法実技では、用意された的に魔法を当てられるかどうかで成績がつけられる。的は円で、中央に赤い丸がある。その丸を中心とする同心円状の円が書かれていて、赤い丸から離れるほど評価は下がる。
 リュウは深呼吸をした。左手に魔法石を、右手を的に向け、呪文を唱える。
「アクア・アスク」
 リュウの右手から針のように細い水が放たれた。

 ヒュッ

 的に小さな穴が空いた。無駄な亀裂などは一切ない、画鋲がびょうで壁を刺したようなきれいな穴だ。
 赤い円のその中央に魔法は命中した。見事なコントロールだ。しかし、魔法が地味すぎたせいか拍手は起こらなかった。
 だけど。

 バキバキバキバキッ

 数百メートルは離れているはずの森の木々が、突然大きな音をたてて倒れた。それはちょうどリュウが前を向いている方向で、かつ、リュウが魔法を放った方向だった。
「あ、いけねえ」
 リュウが頭をかいた。それから何故か私のところへ来た。意味はなさそうだ。
「もうちょっと的が丈夫だと思ったんだけどな」
「なに言い訳してるの」
「ははは」
「森が怒る」
 ライカ先生はポカーンとしていた。無理もない。リュウが放った魔法は、C級とはいえ威力は弱い方で、学者によってはD級とも言われる程度のものだ。それを森を破壊するほどの魔法として放つのは、魔法使いの中でも[魔導師]と呼ばれる魔法のスペシャリストくらいのものだ。
「先生、すみません」
 リュウが言うと、ライカ先生は慌てて言った。
「い、いえ。大丈夫よ。じゃあ、笹木野くんはA評価ね」
「ありがとうございます」

 13 >>20

Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも…… ( No.20 )
日時: 2020/11/22 11:56
名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: II6slNHe)

 13

「次、18番、花園 日向」
 私の番が来た。
『わくわくするね』
 リンが無邪気に笑う。私は返事をせずに指定された立ち位置に立った。Ⅴグループである私は、みんなよりも的に10メートル近い位置から魔法を放つ。
「ウインド」
 ふわあと頬を風が撫でる。心地のよい暖かなそよ風が、グラウンドを通り抜けた。
「花園さん、C評価」
「ありがとうございました」
 あまりにも呆気なく終わったので、リンは開いた口を塞がないまま言った。
『え、日向、終わり?』
「うん」
『ええっ?! もっとすごい魔法使わないの? たくさん魔力込めたでしょう?』
「いいの」
 そんなことをしても、なんの利益も生まれない。
 私は彼らが生きてさえいれば、世界すら、どうなろうと構わないのだから。
______________________
「あー、終わった終わった」
「疲れたの?」
「いいや、まさか」
「うん」
 リュウがあの程度で疲れを感じるわけがない。
『ねえ、日向。どうしてあの魔法にしたの? あれじゃ的に当たったかどうか分からないわ』
 リンはまだあの魔法のことについて文句を言っていた。
「成績が下がるだけ。問題ない」
『あの先生を見返そうよ!』
 私はため息をいて、リンを見た。
「意味がない」
 それだけ言って、私は腕を組み、目を閉じた。
 話すのは疲れる。もういいや。
「ついたら起こすよ」
 リュウのその言葉を聞きながら、私は意識を落とした。

 14 >>21

Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも…… ( No.21 )
日時: 2020/11/23 08:53
名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: II6slNHe)

 14

「日向」
 私は、目を開けた。
「なに」
「なにじゃないだろ。起きろよ、朝だぞ」
 私の視界いっぱいに、朝日の顔が映る。太陽の光を浴びて、金色の髪はキラキラと光っている。桃色の瞳も光が宿り、きれいだと思う。
 私とは違うな。
「勝手に入らないで」
 朝日はいつも私の部屋に入ってくる。その度に注意しているのに、聞く耳すら朝日は持たない。
「さっさと起きてこないのが悪いんだろ!」
 朝日はむっとした顔で言った。
「はいはい。すぐに降りるよ」
 私は立ち上がると、朝日の頭をグシャグシャとかき撫でた。
「おい、やめろって」
「聞こえない」
 朝日だって私の部屋に入ってきた。おあいこだ。
「絶対聞こえてる……」
 ぶつぶつと文句を言いながら、朝日は部屋を出た。
(なにか、忘れてるような?)
 私はなにか違和感を感じた。いつもと変わらない日常。
 どこか、作り物めいている。
「気のせいか」
 私は首を振った。さっさと制服に着替えて、リビングへ行く。

 ガチャッ

「おはよう、母さん」
 返事はない。黙々と朝食を食べ続けている。黒い髪を後ろで縛り、メガネの奥の青い瞳は、どんよりと濁っていた。
「父さんは?」
「もう仕事へ行った。たまには見送りしてあげなよ。さみしがってたぜ」
 朝日がトーストをかじりながら言った。
「考えとく」
 冷蔵庫から食パンやらバターやらを取り出しながら私は言う。
「それ、姉ちゃんの性格からしてやる気ねえよな」
「さあね」
______________________
「おーい、日向?」
 体を揺すぶられる。
「なに」
「お。起きたな、着いたぞ。日向がこんなに寝るなんて珍しいな」
……夢、だったのか。
「うん」

 15 >>22

Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも…… ( No.22 )
日時: 2020/11/23 12:29
名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: QxkFlg5H)

 15

 カラァン…カラァン…カラァン…

 終業を知らせる鐘が鳴る。
『ふー。終わったの?』
 リンが言う。精霊であるリンは、こんなに長い時間ひとつの場所に留まり続けるのには慣れていないのだろう。
 精霊なのだからこっているはずのない肩をぐるぐると回すリンをながら、私は言った。
「私の家まで遠いから、疲れたら言ってね」
 するとリンは、ビックリしたような顔をした。
 私が尋ねることを待っていたのだろう。しばし無言の時間が流れた。
 しかし、私は面倒くさかったので、なにも訊かなかった。異論がないならそれでいい。
 ロッカーへと進む私に、リンは言った。
『ビックリしちゃった。日向、わたしを気遣ってくれてるの?
 ずっと冷たかったから、勘違いしてたけど、結構優しいのね』
「文句を言われるとうるさいから。それだけ」
 リンはクスクスと笑った。

 なに。

 そう訊こうとしたけど、もういいや。面倒くさい。
『あれ、それってペガサスのほうきよね。高級品じゃない。そんなの使うの?』
「なんで知ってるの」
 リンはキョトンとした。
 私は、はあ、とため息を吐き、言った。
「これが高級品だってこと」
 ああ、とリンは呟いた。
『仮契約で戻ってきた仲間に聞いたことがあるの。とってもスピードが出て、気持ちが良いって』
「やめた方がいい」
 精霊は、世のことを知らない無知な存在。それがこの世界における精霊の立ち位置だ。あまりにもそれに外れていると、この世界から弾き出される恐れがある。
『わかってる』
 リンが悲しげに言った。
『みんなそう言うわ。だから、早く他種族と契約を結べってうるさかったの』
 リンのような{アンファン}は、契約を結び、それが切れた時。精霊は一刻を過ぎると記憶が全て消えてしまう。その意識のなかには、自分が精霊であることと、仲間を仲間だと認識する能力。それだけしか残らない。
『でもわたし、知りたかったの。この世界がなんなのか。契約を結んで、外に出て、もっと多くのことが知りたかったの』
「……ふうん」
 悪いけど、リン。

 興味ない。

 16 >>23

Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも…… ( No.23 )
日時: 2020/11/23 12:26
名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: QxkFlg5H)

 16

 家のドアに手を掛けたときに、私は嫌な予感がした。

 ガチャッ

『え……』
 リンが絶句した。それもそうだ。こんな、

 ぐちゃぐちゃな家をみたら。

「おや、日向、帰ったのかい?」
 年のせいで真っ白になった頭の老婆。青い瞳は瞳孔が完全に開かれ、どう見ても異常だ。
「うん、ただいま」
「あいつはどこだい!!」
 祖母は急に怒鳴った。
「さあ」

 ガシャアンッ

 祖母は靴箱の上に置いてあった花瓶をなぎ倒した。
 ……あの子が気に入ってたのにな。
「早くお出し! すぐにでも祓わにゃいかん!」
「おばあちゃんに、そんな力ないよ」
 祖母はかつて、エクソシストという役職についていた。
 いや、役職というのは生涯における職業のことなので、厳密にはいまもエクソシストだ。しかし、祖母にはもう、そんな力は残っていない。
「何を言うか! わしはまだ現役じゃ!」
 そう言いながら、ガシャンガシャンとものを壊していく。

『あいつの肩を見な』

 不快な金属が擦れ合う音のような声がした。
 ギョロリと祖母の目玉がこちらを向く。
「なんだい、その肩に乗っているのは」
 リンが、小さく悲鳴を上げた。
『ひゃっ』
「新しい精霊かい?
 風の精霊、光の隷属だね。それなら……」

 バチバチッ

 黒い稲妻が祖母の体を覆った。
「退治するまでよ!
 フィンブリッツ!」

 バリィッ

 リンの体を、稲妻が貫こうとした瞬間。

 シャラアン

 スレイベルのような、いくつもの鈴が1度に鳴ったような音がした。

 シュパッ

 白い光と共に、稲妻は消えた。そしてそこには、精霊がいた。
 絹のような腰までのびた長いクリーム色の髪。深い森のような翠の瞳。背中にはモルフォ蝶の羽。

 私のパートナーであり光属性の精霊、ベル。

『おばあさん。乱暴は駄目よ』
「現れたね、この……」
 私は闇魔法【沈意】を使い、祖母の意識を強制的に落とした。

 ドサッ

『おじいさんを呼んできたわ。たぶん、もう少ししたら来ると思う』
「わかった」
 私の言葉に頷くと、ベルはキッと祖母の傍らにいる精霊に向かって言った。
『何度も言っているでしょう? もう来るのはやめて』
『ふん! 嫌なこった。勘違いするなよ? オレサマは婆さんの「お前らを倒す」って望みを叶えるために契約してるんだ。文句あるか?』
『あるわよ!』
 祖母は心を病んでいた。私が生まれたことで、母が悩み、心を病み、それが感染するかのようにして、祖母もおかしくなってしまった。私を殺したいと思うことは、異常であれ不思議ではない。
 そんなときに闇の隷属、風属性、雷の精霊、ビリキナは祖母に囁きかけた。目障りならば、殺してしまえと。
 ビリキナにとって、ベルのような光属性の精霊は天敵。祖母のエクソシストの白い力に黒を塗り重ねることで、祖母は大きな力を一定時間操ることが出来る。
 そして祖母を操り、自分が大きな力を操ることが出来るようになる。そういうわけだ。

 バンッ

 ドアが開いた。
「日向、無事か?!」
 慌てた様子で祖父がやってきた。祖母と同様に白く染まった頭はボサボサで、橙色の瞳は不安定に揺れている。
「うん」
 祖父はかごを持ってビリキナを捕まえた。祖父もエクソシストで、こちらはまだ現役だ。ビリキナが力を使ったあとであれば、捕まえることなど造作もない。
『かつては百戦錬磨のエクソシストと言われたあんたも、身内の命がかかっていると手も足も出ないとは、とんだ笑い者だぜ!』
 アハハハッと甲高い声で笑い、ビリキナは祖父に連れ去られた。
 そして祖母も引き取られ、家のなかは再び静かになった。

 第一幕【完】


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