ダーク・ファンタジー小説

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この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】
日時: 2022/01/22 10:11
名前: ぶたの丸焼き (ID: feG/2296)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12919

 ※本作品は小説大会には参加致しません。

 初めまして、ぶたの丸焼きです。
 初心者なので、わかりにくい表現などありましたら、ご指摘願います。
 感想等も、書き込んでくださると嬉しいです。

 この物語は長くなると思いますので、お付き合い、よろしくお願いします。



 ≪注意≫
 ・グロい表現があります。
 ・チートっぽいキャラが出ます。
 ※調整中



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 ありがとうございますm(_ _)m
 励みになります!
 更新速度はこれ以上上がりようがない(上がるかもですが)ですが、これからもどうぞよろしくおねがいします!



 ≪目次≫

     第一章
   ~Hinata's story~

     第一幕

 0,1 >>01  2   >>02
 3   >>03  4   >>04
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 15  >>22  16  >>23

 この世界には、魔法が存在する。火、水、風、土。四大魔力に加え、光、闇の稀少属性、その他数多の魔法が存在する。
 国際立サルヴァツィオーネ学園に在籍する女子生徒、花園はなぞの 日向ひなた。彼女はいつも、無表情。何に対しても興味を示さず、何に対しても無気力。そんな彼女の心を唯一動かすのは、三人の仲間。
「彼らを傷つけることは許さない」
 強すぎる彼女の心は、はたして、愛か、毒か。

     第二幕

 1   >>24  2   >>25
 3   >>26  4   >>27
 5   >>28  6   >>29
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 29  >>61

 バケガクの恒例行事である、≪サバイバル≫。今回の目的地は、北の海の沖にある、[ジェリーダンジョン]。『魔物を寄せ付ける』異常体質を持つ女子生徒、真白ましろも参加し、日向たちはダンジョン攻略を目指す。
 ダンジョンの中で明かされる、日向の罪。それは悪か、それとも正義か。

     第三幕

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 順調にダンジョン攻略を進める日向たちの前に、『ジョーカー』と名乗る謎の男が現れた。どうやらジョーカーは、日向たちの秘密を知っているらしい。
 ついに明らかになるダンジョンボス! さて、その正体は?!
 謎が深まり謎が増える、第一章完結の第三幕! お楽しみくださいませ。


     第二章
   ~Ryu's story~

     第一幕

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 名家カツェランフォートの当主の孫として生まれた、笹木野 龍馬。彼は吸血鬼とは思えないほど温かな家庭で、穏やかな生活を送っている、ように思われる。
 しかし、その内面に秘められた、闇の部分。彼は彼なりの、葛藤を抱えていた。
 第二章は、リュウ目線で進行いたします! 別の視点から展開されるstoryを、みなさま、どうぞ、ごゆるりとご堪能ください。

     第二幕

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 19 >>120

 _日向。おれは、日向を愛してる。
 友情でも恋愛感情でもない、大きな愛を日向に向けるリュウ。
「意思疎通なんてありえない。伝えることでしか、おれの思いは伝わらない」
 リュウが日向に抱く想いとは?

     第三幕

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 33 >>153  34  >>154

 日向の弟・花園 朝日がついに登場! とうとう物語が動き出す?!
 そして今回はなんと、回想編も。日向とリュウが出会った頃のお話です。
 第二章、完結!!

     第三章
   ~Mashiro's story~

     第一幕

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 3  >>157  4   >>158
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 17 >>171  18  >>172
 19 >>173  20  >>174
 21 >>175  22  >>176
 23 >>177  24  >>178

 貧乏でありながらも幸せに暮らす真白の元に、怪しげな訪問者が。その人物とは一体?
 そしてこの出来事が真白の生活を、真白の人生を、そして、……この世界を、壊すきっかけになったのだった。

     第二幕

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 21 >>199  22  >>200
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 朝日と出会った真白は、その無垢な笑顔に徐々に惹かれていく。その笑顔の裏にひそむ『何か』に気付かぬまま……。彼から受けとったペンダントが導く未来とは?

     第三幕

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 25 >>227

 悪魔の力に魅了され、堕ちてしまった真白。
 これは、一人の哀れな少女の物語。幕を閉じてしまった、少女の結末を描いたstory。

     第四章
   〜Asahi's story〜

     第一幕
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 35 >>262

 ボロボロになったバケガク校舎を修復するために家を出た日向を、朝日は追いかける。その先で彼は、日向を取り巻く謎に触れることになる。
 最終章。物語はとうとう終盤へ……。

     第二幕

 1  >>263 2   >>266 
 3  >>269 4   >>274
 5  >>275 6   >>278
 ≪キャラ紹介≫
 花園はなぞの 日向ひなた
  天使のような金髪に青眼、美しい容姿を持つ。ただし、左目が白眼(生まれつき)。表情を動かすことはほとんどなく、また、動かしたとしても、その変化は非常にわかりづらい。バケガクのCクラス、Ⅴグループに所属する劣等生。

 笹木野ささきの 龍馬たつま
  通称、リュウ。闇と水を操る魔術師。性格は明るく優しいが、時折笑顔で物騒なことを言い出す。バケガクのCクラス、Ⅱグループに所属する優等生。

 あずま らん
  光と火を操る魔術師。魔法全般を操ることが出来るが、光と火以外は苦手とする。また、水が苦手で、泳げない。 バケガクのCクラス、Ⅱグループに所属する優等生。

 スナタ
  風を操る魔法使い。風以外の魔法は使えない。表情が豊かで性格は明るく、皆から好かれている。少し無茶をしがちだが、やるときはやる。バケガクのCクラス、Ⅲグループに所属する生徒。

 真白ましろ
  治療師ヒーラー。魔力保有量や身体能力に乏しく、唯一の才能といえる治療魔法すらも満足に使えない。おどおどしていて、人と接するのが苦手。バケガクのCクラス、Ⅴグループに所属する劣等生。

 ベル
  日向と本契約を交わしている光の隷属の精霊。温厚な性格で、日向の制止役。

 リン
  日向と仮契約を交わしている風の精霊。好奇心旺盛で、日向とはあまり性格が合わない。

 ジョーカー
  [ジェリーダンジョン]内で突如現れた、謎の人物。〈十の魔族〉の一人、〈黒の道化師〉。日向たちの秘密を知っている模様。リュウを狙う組織に属している。朝日との関わりを持つ。

 花園はなぞの 朝日あさひ
  日向の実の弟。とても姉想いで、リュウに嫉妬している。しかし、その想いには、なにやら裏があるようで? バケガクのGクラス、IVグループに所属する新入生。

 ???
  リュウと魂が同化した、リュウのもう一つの人格。どうして同化したのかは明らかになっていない。リュウに毛嫌いされている。

 ナギー
  真白と仮契約を結んでいる精霊。他の〈アンファン〉と違って、契約を解いたあとも記憶が保たれている不思議な精霊。真白に対しては協力的だったり無関心だったりと、対応が時々によって変わる。
  現在行方不明。

 レヴィアタン
  七つの大罪の一人で、嫉妬の悪魔。真白と契約を結んでいる。第三章時点では真白の持つペンダントに宿っている
が、現在は真白の意思を取り込み人格を乗っ取った。本来の姿は巨大な海蛇。

 学園長
  聖サルヴァツィオーネ学園、通称バケガクの学園長。本名、種族、年齢不明。使える魔法も全てが明らかになっている訳ではなく、謎が多い。時折意味深な発言をする。

 ビリキナ
  朝日と本契約を結んでいる闇の隷属の精霊。元は朝日の祖母の契約精霊であったが、彼女の死亡により契約主を変えた。朝日とともにジョーカーからの指令をこなす。朝日とは魔法の相性は良くないものの、付き合いは上手くやっている。

 ゼノイダ=パルファノエ
  朝日の唯一の友人。〈コールドシープ〉の一族で、大柄。バケガク保護児制度により学園から支援を受け、バケガク寮でくらしている。バケガクのGクラス、Ⅴグループに所属する劣等生。

≪その他≫
 ・小説用イラスト掲示板にイラストがありますので、気が向いたらぜひみてください。

Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.274 )
日時: 2022/01/22 10:11
名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: feG/2296)

 4

 姉ちゃんは笑顔をすぐに消して、ベンチに座りなおした。それを見たゼノも再びボクのとなりに腰を降ろして、ボクたちの顔をチラチラと見ながら、おずおずと弁当を広げる。
「姉ちゃん、いつ帰ってくるの?」
 ボクは尋ねた。姉ちゃんは口に含んだ食べ物を飲み込んでから、返事をする。
「まだ、帰れない」
 なんとなくそんな気はしていた。予想はしていた。だけど。

「いつ、帰れる?」

 姉ちゃんの制服の袖を、ぎゅっと掴む。こうしていないと、もう二度と姉ちゃんに会えないような気がして、不安なんだ。
 同じ家に住んでいてもあまり顔を合わせないのに、姉ちゃんが、もう家に戻ってこなかったとしたら。思えば姉ちゃんは、『白眼の親殺し』の一件があって以来、ボクと距離を置こうとしている。姉ちゃんが事件の犯人だと世界中が勘違いしたそのスピードは驚異的なものだった。

 まるで、前々から計画されていたかのように。

 当時はあまりにも物事が早く過ぎ去ったから、両親を失ったショックからまだ抜け出しきっていなかったボクは、時間の渦に呑まれるしかなかった。そして気がついた頃にはボクはじいちゃんの家に居て、姉ちゃんとの接触禁止が言い渡されていた。姉ちゃんのいなかった八年間は、なにもかもが空っぽだった。花園家当主の孫だからと、甘やかされるか、媚びを売られるかの繰り返しの日々。幸せなんて、どこにもなかった。

 喉の渇きにも似た飢えを、いつまで経っても満たせない。溺れているかのような息苦しさと、それから、それから、……なんだっけ。
 自分の望みもわからなかった。育った環境があまりにも哀れだからと周りの大人はボクをとことん甘やかした。欲しいものはなんでも買って貰えた。姉ちゃんに会わせてもらうこと以外なら、じいちゃんやばあちゃんはなんでも叶えてくれた。それじゃ足りなかった。じいちゃんもばあちゃんも他の大人も、ボクを道具としか見てなかった。じいちゃんとばあちゃんから生まれた母さんはばあちゃんに瓜二つの容姿で生まれ、花園家の子供としては欠陥品だった。母さんと父さんの間に生まれた姉ちゃんは白眼を持っていて、ボクはやっと生まれた成功作だった。

 大人たちが見ていたのは『ボク』ではなく、ボクが持っていた容姿と能力と花園家当主になる資格だった。ボクを愛していたのではなく、ボクを利用する機会を伺っていたのだ。じいちゃんとばあちゃんはまだマシだったけど、そうであってもボクと姉ちゃんを差別していることが許せなかった。
 心を許せる人が一人としていなかった。姉ちゃんだけだった。ボクを『ボク』として、弟としてそれ以上でも以下でもなく真正面からボクを見て、そして受け入れてくれたのは。ボクには姉ちゃんしかいなかった。それと同時に姉ちゃんにもボクしかいないはずだった。そうでなければいけないはずだった。

『勘違いしない方がいい。日向ちゃんはボクらのものだ。他の誰でもない、ボクらの』

 ジョーカーの言葉が脳裏に浮かんだ。

 姉ちゃんは独りじゃない。笹木野龍馬がいて東蘭がいてスナタがいる。ジョーカーだって学園長だって、ボクの知らない姉ちゃんを知っている。姉ちゃんには、ボク以外の誰かがいるのだ。

「わかった。明日、帰る」

 頭上から姉ちゃんの声がした。ボクが掴んでる方とは逆の手でボクの頭を姉ちゃんは撫でる。
「元々は今日帰るつもりだった。予定を変更したのは、様子見しなさいって学園長に言われたってだけだから」
「ほんと?!」

 ボクは顔を上げて姉ちゃんを見た。

「うん」

 嘘は言ってない。じっと顔を見つめてそれを理解し、ボクはやっと安心出来た。
「待ってるからね」
 ボクが言うと姉ちゃんは頷き、少ない荷物を持って立ち上がった。それに合わせてボクも手を離す。

「それじゃあ、私は戻る」

「うん、じゃあね!」

 引き止めたってどうせ意思は変えないだろうから、ボクは笑顔で手を振った。横でゼノもぺこりと頭を下げる。姉ちゃんは特別なアクションはとらず、静かに去っていった。

 姉ちゃんの姿が見えなくなって数秒後、ゼノは大きくため息を吐いた。

「はー、ビっくリシた」
「どう? すごいでしょ、姉ちゃんは」

 にやにやしながら聞いてみる。ゼノの手はまだ震えていて、顔も赤い。
「ウン、すごい。やっパりキレイ。雰囲気も静かでガラスざイクみタいで、エット、エット」
 今度は興奮で頬を紅潮させ、両手を拳に握ってボクに語る。
「ソレに、笑顔がステキだった。あんナカおもするンダね」

 あまり姉ちゃんを自慢出来る機会はないので、ボクは何度目かも分からない姉自慢を再びゼノに繰り広げる。

「そうなんだよ! 姉ちゃんはまず、とにかく美人なんだ。髪は陽の光に当たるとキラキラ光って、伝説上の、天使族みたいなんだ。昔は仲のいい人には『アンジェラ』って言われたりしてたんだよ。日常的に呼ばれてたんじゃなくて、たまに冗談めかして、だけど。それでね、頭もいいんだよ。魔法の公式は全部頭に入ってるし、今現在提唱されている、例えば魔法障害なんかの原因の仮説とかも沢山知ってるんだ。筆記のテストは、どうしてかは分からないけど手を抜いてるみたいで成績は良くないらしいけど。
 魔法の才能もあってね、ボクなんかじゃ足元にも及ばない。二歳や三歳でほうき乗りをマスターして、五歳の頃には既にダンジョンに潜ってたんだってさ」

 姉ちゃんは冒険者登録をしていて、ランクはCだ。以前何度かギルドカードを見せてもらったことがある。実力は明らかにAかSなのにどうしてCランクに留まっているのか尋ねたところ、ランクを上げるにはいくつかの条件があるらしく、そのうちの一つに〈ランク認定試験〉というものがあると言っていた。それを受けなければいくら経験値を貯めてレベルを上げようとランクを上げることは出来ないシステムになっていて、姉ちゃんはその試験を受けていないからCランク止まりなんだとか。

 姉ちゃん曰く、ランクを上げ過ぎると世間から冒険者としての名が売れてしまい、自分が白眼であることも関係して、逆に冒険者として動きにくくなってしまう恐れがあるらしい。姉ちゃんはお金を浪費するタイプではないからCランクで受けられるクエストをこなせばそこそこのお金は貯まるから問題は無いと言っていた。『白眼の親殺し』からの八年も、学園からの援助も受けつつ経済面はそうやって補ってきたそうだ。

「それにね」

 楽しそうにボクの話を聞いてくれるゼノに、ボクは言った。

「姉ちゃんは、とっても優しいんだよ」

 5 >>275

Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.275 )
日時: 2022/01/22 10:10
名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: feG/2296)

 5

「ねえねえ、アサヒ。それデ、なにガあっタノ?」
 ボクの姉自慢を聞き終えて、ゼノが言った。

「あ、そうだね。ごめん、今から話すよ」
 忘れていたわけではない、というのは、嘘といえば嘘だし、嘘じゃないと言えば嘘じゃない。姉ちゃんに会ったことで意識の隅に追いやっていたのは否定しないけど。

「どこから話せばいいかな」
 どこまで話せばいいかな。

 姉ちゃんは確実に、先日バケガクで起こったことを秘密にしたがっていると思う。その場にいた全員が口封じの契約を結ばされていたことからもそれは明らかだ。でもボクは契約を結んでいない。ボクはあの日何があったのかをゼノに伝えることが出来る。そういえば、学園長も姉ちゃんも誰も、どうしてボクに口封じをしなかったんだろう。契約はおろか、口外するなとも言われていない。

「ゼノは、どこまで知ってるの?」
 真白のことから話さないといけないのかな。

「確かバケガクの生徒が悪魔化して、校舎を破壊シタんだよね? それで、そノ場には花園先輩と笹木野先輩がイテ……エット」

 なるほど、その辺りか。
 まあ、ボクも真白が暴走した時のことは知らないんだよね。
「そうだね、その辺りはボクも詳しく知らない。あの時は知っての通り、学園長の【転移魔法テレポート】で広場にいたからね」
 そして確か、ゼノは図書室に居たんだっけ?

「うん、覚えてル。あの日アサヒと合流デキテ、スごく安心した」
「ゼノ、少し涙ぐんでたもんね」

 くすくすと笑いながら言うと、ゼノは顔を真っ赤にして黙ってしまった。

「ボクが知ってるのは、バケガク修復について。ほら、校舎を見てご覧。真白先輩が暴れてバケガクが崩壊したはずなのに、まるで何事も無かったかのように元通りでしょう?」
「アッ、それ、噂にナッてたよ。《バケガクよろずの謎》でしょ?」

 急に出てきたゼノの言葉に、ボクは首を傾げた。

「なにそれ?」

「シラナイの? 
 そっか、アサヒはバケガクに入学して一年目だもんネ」

 ゼノはバケガクに入学して六年めになる。姉ちゃんや真白もそうだけど、退学しない限り、Ⅴグループの生徒は在学期間が長い場合がほとんどだ。それは他種族の生物が在学するバケガク故の進級システムが関連する。

 まず、希望者は年度末に進級テストというものを受けることが出来る。その結果次第で進級、飛び級が可能だ。このテストはペーパーテストだけでなく、魔族は魔法実技試験も加わる。バケガクは魔法が全てという考え方ではないのでそれ以外にも進級する方法は無くはないが、基本はこうだ。

 そしてその『テスト以外で進級する』方法の一つに、『在学日数』というものがある。在学日数が三年になると進級テストの合格基準点が下がり、進級しやすくなる。在学日数が五年になると、進級テストがペーパーテストか魔法実技試験のどちらかだけ、あるいは合格基準点をさらに下げることが出来る。

 在学日数が十年になると、自動的に進級出来る。

 寿命の短い種族だともう少し感覚が短くなったり、個人の能力によって例外として多少変わったりするけれど、原則としてはこうだったはずだ。

「デモ、言葉の通リだヨ。《バケガク万の謎》は、バケガクにたくサンアる都市伝説や伝セツノ総称。その一つに、『再生する校舎』っていうのがあるの。誰カがツけちゃったキズなンかが翌日には直っテイたりスるラシいの。
 他にモ『通達の塔』とか、あと図書館にツイテの都市伝説とか、とにカクいッぱいあルンだよ」

 言われてみれば、確かに、バケガクほど歴史もあり特殊な学校なら、都市伝説くらいあっても不思議じゃない。

「そうなんだ。えっと、それでね、このバケガクを直したのは姉ちゃんなんだ」
「そうなの!?」
 ゼノは驚いたようで、目を見開き口を手で覆った。そして口に含んでいた食べ物を飲み込み、言う。
「すごいね……こんなに大きなバケガクを直しちゃうなんて」
 おそらくゼノはわかっていない。きっとゼノは、姉ちゃんが行った魔法をただの【修復魔法】だと思っているのだろう。元の状態に戻すのではなく、あくまで『自分の脳内にある元の形』に戻す魔法である、と。
 まあ、それもそうだ。その【修復魔法】ですら、一人でこの大きなバケガク、そしてあの崩壊具合を元に戻すとなるととんでもない労力が必要となる。誰が【再生魔法】──空間精霊を寸分すらの狂いなく再構築する魔法を使ったなど考えるだろう。そんな魔法が存在することすら知らない人がほとんどに違いない。

「うん。姉ちゃんは凄いんだよ。でも、やっぱりすごく疲れちゃったらしくて、ずっとバケガクで休んでいて、この学園閉鎖期間、家に帰って来なかったんだ」
「そういうコトだったんダね」

 朝のボクの言葉の理由を理解してくれたのか、ゼノは頷いた。
「デモ、今日帰ってくるンだよね。ヨカったね」
「うん!」

 話すのは、この辺でやめておこう。全てを話すにはあまりにも濃い。それにただ単に、知られたくない。ようやく知れた、姉ちゃんの知らなかった部分を教えたくない。

「そういえば、進級試験の勉強は進んでる?」
「むぐっ!」

 ボクが言うと、ゼノは咳き込んだ。

「シ、神話なら、多分デキるか、なあ?」
「それは元から知ってることであって勉強したわけじゃないでしょ? というかそれすらも曖昧で、大丈夫?」
 ゼノは〈呪われた民〉を調べるついでに神話にも興味を持ったらしく、神話の雑学のようなものも沢山知っている。

 ただしその分、授業で習うようなことは度々抜けている。

「がんばッてはイルんだよ?」
「ゼノはFクラスに上がれるのかなー? ゼノが一緒じゃないとボク寂しいなあー?」
「ウッ」

 黙り込んでしまったゼノを見て満足し、ボクはゼノに笑いかけた。

「だからさ、これから時間が合うときは、放課後一緒に勉強会しない? ボクも勉強したいところとかあるからさ」
「イイノ? あ、でも、アサヒって頭いいのに、何を勉強するノ?」
「いやいや、買い被りすぎだよ。ゼノが得意な神話、苦手だし」
「そんなこと言って、『ニオ・セディウムの六帝』言えるデショ?」
「えーと、順番にテネヴィウスプァレジュギスイノボロスドュナーレディフェイクセルムコラクフロァテノックスロヴァヴィス……」
「ほラぁ!!」

 6 >>278

Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.276 )
日時: 2022/01/20 19:32
名前: げらっち (ID: 7dCZkirZ)

第一部、RPGの冒険みたいで面白い!
ダンジョンやアイテムボックスの設定も凝っていていいねぇ。
メイン4人のキャラが立っていて、お互い弱い所をカバーしているのもよかった。
日向の殺戮シーンは何度見てもえぐい(←過去の感想でもこれ書いてました)。しかし、腕は蹴っただけで取れるのか?
真白つかえん…スナタがにこやかに真白を諭すのもgood。

第三幕あたりから、「さらさらさら」「じゃぶじゃぶ」「ごそごそごそ」「ぐらぐら」など、擬音語が続いて居るのも特徴的。
「無理、だろうね。」「楽しみで、仕方ない」「嗚呼、楽しい。」などの日向の視点にドキドキしますなぁ。

謎のジョーカー。ボスの下の下の下で、組織の切り札。結構上ってことか?
キャノンボールクラゲェ!!

感想書くの下手だ……

Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.277 )
日時: 2022/01/22 09:59
名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: feG/2296)

>>276
いつも感想をありがとうございます。

面白いですか、良かったです!
そう言って貰えて嬉しいです。
キャラのバランスは特に苦手としている要素の一つなので、そう言って貰えて嬉しいです。
言ってましたね笑 あのシーンは自分でもギャーギャー言いながら書いてました。お気に入りです。腕のことは気にしないでください。私も疑問に思ってるんです。殺戮シーンを書きなれていなかった頃に書いたやつなのでおかしな点は多々ありますがご了承ください。
真白さんにはもう少しくらいは活躍してもらうはずだったんですがね。あれ?

バカセカは擬音語多いですね。
日向は危なっかしい、しかしそこがかわいい。

ジョーカーについてはようやくもう少しで出てくる『予定』です。ようやく。クラゲェ

感想ありがとうございました!!

Re: この馬鹿馬鹿しい世界にも……【※注意書をお読みください】 ( No.278 )
日時: 2022/01/22 10:09
名前: ぶたの丸焼き ◆ytYskFWcig (ID: feG/2296)

 6

 あー、面倒くさいな。

 ゼノと色々話し合った結果、今日から勉強会をすることになった。下校時刻までは放課後でも教室は開放されているから、教室で勉強会をする。これは今回が初めてではないのですんなりと決まった。ただし、ボクはアビア=カシェと先生とで話をしないといけないので、それが終わってから。待っている間、ゼノは図書館にいるらしい。

 本当に面倒くさい。

 一人で教室の席に座って待っていると、アビア=カシェが側へ寄ってきた。
「残ってくれてありがとう。そろそろ先生が来るはずだから、もう少しだけ待っててくれる?」
 言われなくても、今更去るわけないじゃないか。馬鹿なのか?
「うん、わかった」

 愛想笑いは得意だ。

 アビア=カシェはほっとしたように表情を緩める。そしてボクの前の席に座り、体をこちらに向けた。
「朝日くんは、パルファノエさんと仲がいいんだね」
 黙っててくれないかな。別に、ボクは会話がなくても気まずくもならないし不快にもならないんだけど。むしろ会話が不快だ。
「そうだね。話す人はほかにもいるけど、特に仲がいいのはゼノかな」
「そっか。実はね、僕も朝日くんと友達になりたいと思っててさ。良かったら、これから仲良くしてくれると嬉しいな」
「え、ボクと?」
「うん」

 なんで?

「もちろんいいよ。そう言って貰えて嬉しい」
「よかった! 改めてよろしくね」

 ガラッ

「待たせちゃってごめんね!」
 慌ただしく登場したのは担任のロアリーナ先生。通称ローナ先生と呼ばれている女性で、性格のキツそうな顔立ちに反して天然の混じった柔らかな性格の、占いが得意な先生だ。

 ロアリーナ先生はボクたちが座っていた席の近く、正確にはアビア=カシェの隣に座った。すると、ボクが二人と対面する形になった。少し距離や座る位置を調整したあと、ロアリーナ先生が切り出した。

「何を話すか、もう聞いてる?」
「いえ、特には」
「あら、そうなの?」
「はい」
 ロアリーナ先生は疑問符を顔にうかべてアビア=カシェを見て、それからボクに言った。

「話したいことはね、朝日くんのお姉さんのことなの」

 ゾワッと全身の毛が逆立つような感覚に襲われた。すぐには消えない悪寒の余韻が気持ち悪い。
 なんだ? 何が聞きたい? 話したいってなんだよ何を話すつもりだよ嫌だ嫌だこっちに来るな近寄るな踏み込むな踏み荒らすな。

「カシェくんがね、朝日くんのことを心配していたの。それで自分に出来ることがないかってまずは私のところに相談に来てくれて、それで、朝日くんがどうして欲しいのかを聞こうって話になったの」

 ボクは自分から姉ちゃんのことを打ち明けたことは無い。けれど苗字も同じで名前も似ているし、髪色や髪質も似ている、それに姉ちゃんが悪魔祓い師の家系なことは有名でボクの魔法適性もそちらに傾いているので、ボクと姉ちゃんの関係に気づくことは容易だ。ボクは姉ちゃんと違って、姉ちゃんの弟であることを隠しているつもりは無い。大っぴらにひけらかすのは姉ちゃんが望まないから、『自分から』言わないだけだ。

「朝日くん。もし、もしよ? もし何か悩んでいることがあるのなら、教えて欲しいの」
 ああそうか、ロアリーナ先生は少なからず人の心が読めるんだっけ。それで『勘違い』したんだな。
「悩んでることなんて、ありませんよ」
 あったとしても、お前らに言うもんか。
 お前らに、何が出来るっていうんだよ。

「急に話してって言われて混乱するのはわかる! でも、信じて欲しい。僕と先生は本気で朝日くんのことを心配してるんだ!」
 アビア=カシェが言った。

 だから? 心配してて、それがなんだって言うんだよ。迷惑でしかない。なにもありがたくない。なにも。
 あー、なんて言おう。面倒くさいな。いちいち関係を悪くしないためにどうするべきか考えないといけないのが本当に面倒くさい。
 いっそ怒鳴り散らして、教室を飛び出してしまおうか。

「これ、見て」
 そんな風に思考を巡らせていると、ロアリーナ先生が持っていた紙、資料を広げた。
「知ってる? バケガク保護児の話」
 ボクは頷いた。その話は以前ゼノに聞いたことがある。

 周知の事実、バケガクには様々な生徒がいる。姉ちゃんみたいに自分の力を隠している生徒、笹木野龍馬のような天才や、真白のような根本から全てに劣っている生徒。

 そして、ゼノのような複雑な生い立ちを背負う生徒。

 ある意味ゼノはボク以上の苦労人だ。ゼノみたいな特殊な事情を抱えた生徒は在学中や卒業後、生活することすら困難な場合が多い。そんな彼らを救うべくして出来た制度が、バケガク保護児制度だ。
 厳密な審査に受かって保護児になると、奨学金や寮、個人に合った冒険者ギルドのクエストの手続きなど、学園側から多大な支援がもらえるらしい。保護児の主な就職先は、バケガク職員だそうだ。

「実はね、そのバケガク保護児になるための条件に、朝日くんも該当する場所があるの。ここを見て」
 ロアリーナ先生が指した部分には、こう書いてあった。
『聖サルヴァツィオーネ学園 保護児の条件
 …………
 ・家庭内に、生徒に肉体的又は精神的に危害を加える恐れのある者がいる場合
 …………』

 紙を埋め尽くすかのごとくびっしりと並べられた文字の中で、その文言だけが目に入ってきた。

 怒りは湧いてこなかった。こんなことにはもう慣れた。
 怒りは湧いてこなかった。その代わり、ため息が出た。

「じ、実際にどうなのかは、僕たちにも分からないよ。でも要は、審査を通り抜けられればそれでいいんだ。朝日くんのお姉さんは、きっと朝日くんから学園に申請すれば、きっと学園も認め」
「いらない」

 ボクはアビア=カシェの言葉を断ち切って言った。笑みを浮かべて、アビア=カシェを見た。
「ボクね、幸せなんだ。ずっっっと姉ちゃんと離れ離れに暮らしてたんだ。わかる? 八年間だ。八年もの間、ボクは最愛の姉に会うことを許されなかったんだ。ようやく会えたんだ。姉ちゃんに、やっと。
 それを邪魔するな」

 もっとオブラートに包むつもりだったのに。まあ、いっか。こいつらを怒らせてしまったとしても、ポクには関係ない。ボクには姉ちゃんさえいればそれでいいのだから。

「失礼します」
 そう声をかけて、何か言っている二人を残して教室をあとにした。

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