花言葉の約束 空花 /作

【1】
――お母さんなんていらない!!
いつだって、そう思っていた。
キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン……。
放課後のチャイムが鳴る。
皆にとってはやっと帰れる、やっと部活だー、そんな感じのチャイムなんだろう。
でも私にとっては、そのチャイムは悪魔のように思えた。
ろう下は、友達と帰っていく人、チャイムが鳴ったのにも気付かず、友達としゃべったり騒いだりしている人、だるそうに壁にもたれかかっている人……。
色んな人がろう下に溢れている。
――私は、家になんて帰りたくなかった。
出来ることなら、このまま壁にでも吸い込まれて、消えてなくなりたかった。
何故って、私には、一緒に帰る友達もいないし、家に帰っても、笑顔で『おかえり』と言ってくれる人なんて、いない。
……ホントは、一緒に帰る友達も、家に帰ったら、笑顔で『おかえり』と言ってくれる人も欲しい。
だけど、今の私には叶わない願いなんだ。
今の私は、人が怖いから。
お母さんに……虐待、されているから。

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