花言葉の約束 空花 /作

【34】
今の私もこの日記と同じ気持ちだ。
どうして虐待なんかするの?
理由があるの?
どうしてもしなくちゃいけないの?
――それは、分からない。
もしかしたら、お母さんはストレス発散のために私を虐待しているのかもしれない。
でも、その理由が何だとしても、1つだけ同じモノがある。
【虐待などして良いことなどない】
たとえ私を虐待することで、お母さんのストレス発散ができたとしても。
虐待される側は、苦しい。痛い。怖い。
泣きたくなるほど、辛い。
誰も助けてくれる人が居なくて、虐待されていることに気付く人もいなくて、真っ暗な世界に突き落とされる。
虐待って、そういうモノなのに。
虐待で亡くなる人も居るのに。
どうして。
どうして?
私はノートの最後のページを見た。
――書いてある。
――――――――――――――――――――――――――――
10月5日 火曜日
今日の天気は晴れ。
とってもキレイな空だった、このノートの表紙の空みたいに。
お母さんがわたしにしていることは『ぎゃくたい』なの?
すごくいたいよ。つらいよ。くるしいよ。
わたし、お母さんに何か悪いことしたの?
だから、あんなにひどいことするの?
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
――――――――――――――――――――――――――――
最後の字は少し震えていた。
この時の私は、きっとものすごく辛かったんだ。
今の私の辛さより、ずっとずっと。
きっとそうだ。
『お母さん、ごめんなさい』
その思いは通じないんだ。
どんなに、痛いよ、もうこんなことしないでって叫んでも。
分かってくれるお母さんはもういない。

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