花言葉の約束 空花 /作

【59】
優奈目線
そのまま私は走り続けた。
やっと家に――いや、七海を見つけた時はもう息切れが激しくなる程に疲れていた。
家に居るはずだった七海は、1人の女の子と共に街を走っていた。
声を掛けようとしたけれど、息切れのせいで声が出ない。
私が後ろを向いたまま立ち止まっていると七海の方も私に気付き、私の方へと近寄ってきたのが分かった。
やっと息切れが収まって振り向くと、七海の見下すような目が私を見ていた。
「お母さん」
七海目線
その時、確かに人が走る音が聞こえた。
琴音もそれに気付いたらしく、周りを見渡していた。
私も周りを見渡すと、向こうの歩道にお母さんが走っている。
一瞬意識が飛んだような気がした。
「ねえ……もしかして」
琴音は言いかけて思ったことをを言葉に変えるのを止めた。
迷っている暇なんてない。
私は向こうの歩道へ続く信号へと走り出す。
琴音も私を追いかけてきて、2人で、全力で走る。
意外と信号への距離は意外と近く、点滅し始めた頃に信号まで着き、そのまま横断歩道に飛び込む。
信号が赤になる前になんとか渡り終えたけれども、まだ終わらない。
お母さん。
私はあなたを追いかけます。
丁度その時お母さんが立ち止まり、その隙にもっと全力で走った。
そしてどんどん、私達はお母さんに近づいていく。
距離が縮んでいく度に心臓の鼓動が早くなるのが分かる。
もう少しで話せるくらいの距離まで近付くという所で、私は立ち止まった。
私は呼吸を整えて、大きく息を吸い込む。
そして、お母さんに向かって琴音とゆっくり歩いていく。
声を掛けようとした時、お母さんは振り返り、私達を見つめた。
信じられないというような表情で。

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