花言葉の約束 空花 /作

【63】
やっと家に帰ったときにはもう7時半を過ぎていた。
「お母さんのストレスの原因って、何だったの?」
思い切って私がお母さんにそう問いかけると、お母さんは全てを私に話してくれた。
仕事場の岡田さんの事も、近所の人から少し避けられていた事も。
私はお母さんが話し終わるまで、黙って話に耳を傾けていた。
少しだけ懐かしい家の風景を眺めながら。
その後、お母さんは夕飯に、お父さんの好きだったグラタンを作ってくれて、2人で食べた。
少ししか残っていないお父さんの記憶。
前に夢で見た水族館の帰り道の出来事。
それらを思い出しながら食べたグラタン。
「すごく美味しかったよ、お母さん。ごちそうさま」
食べ終わった後、私はそうお母さんに声を掛けて皿を片付けた。
その時、お母さんが笑顔になるのが少し見えて私も少し嬉しくなる。

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