花言葉の約束 空花 /作

【50】
七海目線
私は、部屋の片隅で時計を眺めていた、
時計の針が少しずつ動いていくたびに、時間は進んでいく。
ただそれを眺めているだけ。
何の意味もない、ただの暇つぶしのようなもの。
だけど他にやることもない。
――受験勉強。
その時、頭の中をその言葉が駆け巡った。
勉強、しよう。
私はそう決め、机に向かった。
優奈目線
家の中は静まり返っていた。
物音すらしない。
私はイスに座り、テレビのスイッチを押した。
ちょうどチャンネルはクイズ番組で、にぎやかな司会者の声が流れていた。
その画面を見つめていると、ふいに岡田さんを思い出した。
岡田さんはもう帰っただろうか。
姑とか離婚したいとか言ってたけど、岡田さんが私達を傷つけたのに。
岡田さんのせい。
仕事に行きたくないのも、岡田さんのせい。
ストレスが溜まるのも、岡田さんのせい。
笑えなくなったのも、岡田さんのせい。
私を変えたのは、岡田さん。
岡田さんが居なければきっと私達は今でも幸せだった。
「岡田さんは許さない!!」
そう叫んで私はテーブルを思いっきり叩いた。
手が少しヒリヒリと痛む。
「絶対に……絶対……」
気付けば私の目からは涙が零れ落ちていた。
苦しい。
今だって、昔だって、変わらず幸せで居れたはずなのに。
例え大切な人が事故死したって、七海が、大切な娘は今も生きている。
虐待したのは私のせい。
それは決して岡田さんのせいじゃないって、分かっているのに。
私がもっと早く自分自身と向き合えばよかったんだ。

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