花言葉の約束  空花 /作



【57】



何も言わずただ先を歩いていく琴音。

黙ってその後をついていく私。

……それが、ずっと続いていた。

まるで、出口のない迷路を永遠に彷徨っているみたいに。

ふと立ち止まり空を見上げると、空は少しだけ夜に近づいていた。まだ周りの風景もはっきりと見える。

立ち止まっている私に気付き、琴音が私の方を振り向き、立ち止まった。

ただ黙って私を見つめるだけの琴音。

"早く行こう"

まるで、そう言っているかのように。

何も琴音に出来ず、私は再び歩き出す。

――色んなところを歩き回ってみたけれど、お母さんは見つからないまま。

一体、どこに居るというのだろう。

このまま捜していても見つからないんじゃないか、なんて何度も思った。

けれど琴音は何も言わない。

そして私も黙っている。

何も、言えなかった。


***


夕焼けのオレンジが照らす道。

私は――何をしているのだろう?

何の為に、お母さんを捜している?

――歩きながら考えてみても、よく分からない。

それでも確かなのは結局、私は1人では生きていけないということ。

誰かに手を差し伸べてもらわないと、生きる自由さえ失ってしまう。

そして、その"誰か"はお母さんなのだ。

悔しかった。

"どうして、お母さんの子に産まれてきたんだろう"

そう何度も、居るのかさえ分からない神様に問いかけた。

返事が無いのは当たり前だった。

せめて、全て終わらせる事が出来たならどれだけ楽になれただろうか。