花言葉の約束 空花 /作

【58】
優奈目線
何もしないまま時間は過ぎていく。
夕暮れの空も少し薄暗くなり、寒い。
川の水面がゆらゆらと揺れている。
――七海や岡田さんは今、どうしているだろう?
今日、当たり前に顔を合わせた人も懐かしく思える。
それくらい、私は疲れていたのだろう。
私は――生きたい?
"生きる"のも、"死.ぬ"のも簡単な事。
一度死.んでしまえば、元には決して戻れない。
私は心の片隅で逃げようとしてた。
いつの日からか、"母親"という責任の重さに、耐えられなくなった。
薄々自分でも気付いていたはずなのだ。
虐待した事を後悔しても、結局何もしない。
そんな日々が続いても、早く謝りたいという焦りがあっても。
このまま、私は逃げていいのか。
七海が許さなくても、いい。
謝らないとダメだ。
私は立ち上がり、家へと向かう。
七海目線
相変わらずお母さんは見つからないままだ。
琴音ももう、半分諦めかけたように俯き加減で歩いている。
でもそれは仕方ない事だ。
これだけ街を歩き回っても見つからないのだから。
そして、私も半分諦めかけていた。
真っ暗な夜の先にあるはずの朝がもう二度とやってこないような気がして、何となく不安になる。
"アタリマエ"
その存在が、遠くなるような、そんな気がした。

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