花言葉の約束 空花 /作

【16】
私はそのイライラの気持ちを心の片隅に放置する事にした。
考えても分かんないモンは分かんないし。
――ガチャッ
誰……?
お母さん、しか居ないよね。
「七海、ご飯よ」
お母さんはやけに落ち着いた口調で言った。
私が黙って部屋を出ようとすると、お母さんはまた怒り出す。
「ちょっと! 返事くらいしなさいよ!!」
五月蝿いな。
どうしてこんな小さい事ですぐ怒鳴るんだよ。
「分かったよ」
私は心の中でお母さんの悪口を言いながらもぼそっと返事した。
お母さんの顔には、"もっと大きな声で返事しなさいよ"なんて書かれていそうだったけど、何も言わないから、無視した。
夕飯は、エビピラフだった。
「いただきます」
私は静かに言って、箸を手に取った。
私はエビピラフを何とか食べ終わって、
「ごちそうさま」
そう言い終わった後、皿をキッチンまで持っていった。
その後は、部屋に入ってクローゼットの中を覗いた。
"どうせ死ぬなら綺麗な服装で死にたい"
そんな気持ちがあったから――。
すると、クローゼットの奥からスカートズボンと、長袖で淡い水色に星などがプリントしてある服が出てきた。
私、こんなの持ってたんだ……。
まあいいや、とりあえずこれを着よう。
――私は着替えた後に、窓の外を見ていた。
窓の外は、雨がポツリポツリと降っていた。寂しい感じで。
今は何時だろうと思いながら時計を見ると、もう6時半過ぎくらいになっていた。
そろそろ家を出なくちゃいけない時間……。
私は薄いジャンバーのポケットにさっきの紐を入れて、部屋を出た。
お母さんは、リビングで寝ていた。
もう、お母さんなんて……どうでもいい。
今はとにかく家を出なくちゃ、と私は思い、
ついに、家を出た。

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