花言葉の約束 空花 /作

【26】
琴音は、優しいだけじゃない、心も強い。
まるで私とは正反対なんだ。
どうしてこんなに弱いんだろ。私。
「琴……音?」
「うん? どうしたの?」
琴音は食い入るように私の瞳を見つめた。
その瞳――、なんだか苦手だ。
全て分かっているような瞳が。
「琴音は、どうしてそんな風に、生きていけるの? それと……」
そう言いかけた私の言葉を遮るように琴音は言った。
「感情があるから。今まで生きてきた中でうれしい、悲しいとか感情を精一杯表現してきたからだよ」
――まるで、花が静かに咲くみたいだった。
まだ……私には少し難しかった。
でも、その通りだと思った。
琴音はものすごく真剣な表情をしてた。
全て分かっているようなその瞳。
「今……何か言いかけたよね?」
琴音は私が何か言いかけていた事に気付いてそう言った。
「琴音は何でこんな時間に公園に居たの? って言おうとしたの」
私が疑問に思っていた事。
「えっと、それは……一言で言えば、夜のパトロール、ってとこかな」
「へえ、そうなんだ。 でも、夜のパトロールって何?」
今夜、月は見えない。
今夜、星は見えない。
だけど私達の知らないところで、雲の奥で輝いているはず。
そんな風に、私の心の奥でも、「強さ」と「優しさ」という存在が隠れているのかも、しれない。
今はまだ――
雲に隠れているのかな。
「自分の弱さ」という雲に。

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