白雪姫はりんご嫌い  はるた ◆On3a/2Di9o /作



【11】



今更期待しても無駄だった。

もう随分前から分かっていた。

けれど期待しないと自分が壊れてしまいそうで。

――ガチャッ

お母さんは黙って部屋から出て行った。

ズキズキと、さっき叩かれた跡が痛む。

「あはは……」

少しだけ、笑った。

いつも、信じていた。

お母さんはきっといつか、私に笑ってくれるって。

元の優しいお母さんに戻ってくれるって。

本当は、そんな事ないって分かっていたはずだったのに。


私はふらふらと立ち上がった。

――ズキッ

「痛っ…!」

私の右手に鋭い痛みが走った。

何が起こったの……?

――見るのが怖い。

そう思った。

私は『見るのが怖い』という気持ちを抑え、なんとか視線を右手に向けた。

「ひっ……」

ガラスが、私の手に刺さってる。

右手は血で赤く染まっていた。