花言葉の約束 空花 /作

【43】
もしかしたら一生終わらないかもしれないその"罰"
『万引きした人』
そう、一生言われ続けるかもしれないのだ。
その"罰"は重いのか軽いのか。
岡田さん自身できっとそれが決まるだろう。
「それが本当に見間違えだとしても、この前の万引きでは万引きGメンさんに捕まってましたよね? それは確かですよね?」
「あれは……誤解です」
岡田さんの声が少し低くなった。
「どういう誤解ですか?」
「……とにかく誤解なんです」
少しだけ間があり、その後に岡田さんが発した言葉は幼い子供の言い訳のようで、仕事場の誰もが岡田さんを疑うだろう。
「そんな言い訳もう通じませんよ」
水野さんの言う通りだった。
***
それから、時間はどんどん過ぎていって、私は今家に帰っている途中だ。
岡田さんは結局一週間の謹慎処分となった。
『時はもう二度と戻らない』
誰かが言っていた言葉をふと、思い出した。
どんなに戻したくても戻せない時間。
岡田さんは今、どんな気持ちでいるだろう?
嘘をついているのか。
本当にしていないのか。
そのことさえも私には分からない。
もし、嘘をついているのなら、岡田さんは自分がしたことを後悔しているのか。
もし、本当ならば、誰が嘘をついたのか。
結局どちらにせよ、誰かが嘘をついたことに変わりはない。
どんなに言い訳をしたって、それは確かだ。
と、その時、風が吹いて、私の髪を揺らした。
すぐに風は、どこかへと流れていってしまった。
この風は、どこへ行くのだろう。
なんて、子供っぽい想像をしてみた。
それは、今日の事を忘れたかったからかもしれない。

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