花言葉の約束 空花 /作

【53】
お母さん、買い物とか用事があるならいつも仕事帰りに行くのにな……。
「お母さん!!」
大声で叫んでみたけれど返事は返ってこない。
嘘……。
どこに行ったの?
何か急な用事ができたの?
私は混乱するばかりでその場に立っていることしか出来なかった。
「お母さん……お母さん……」
どうしよう。
捜すしか、ない。
私はそのまま玄関へと向かって玄関のドアを開けた。
エレベーターを待つ時間はない。
急いで階段を駆け下りっていたけれど、さすがに途中で息が切れる。
かなり疲れたけれど、私は走り続けた。
階段が終わる頃には苦しくて息がしづらかった。
でも休む訳にはいかない。
私はマンションのドアを開け、外の世界へ入っていった。
全速力で走り続ける。
あちこち探し回ったがお母さんらしき人は見つからなかった。
私は立ち止まり、少し考えてみた。
――琴音。
琴音になら頼れるかもしれない。
緑花公園に、いるかな……。
私は緑花公園へ向かって走り出した。
そして、気付いた。
私は、やっぱり優しいお母さんに戻って欲しい。
心からそう思っていると。
今こうやって必死に走り回って捜しているなんて、多分そう信じているから。
何だかすごく嫌な気持ちになった。
お母さんが昔のように優しくなるはずないのに、何信じちゃってるんだろう。
バカみたい。
あんなお母さん、いらないって何度も思ったはずなのに。
だけど私は溢れる気持ちを押さえ、緑花公園に向かう。
琴音に、会いたい。

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