花言葉の約束 空花 /作

【48】
優奈目線
今日の空は、曇っていた。
一応傘を持っていったが、多分、雨は降らないだろう。
私は外の方をちらりと横目で見ながら、仕事をしていていた。
岡田さんは少しぼうっとしているように見えた。
最近は、"差別"がなくなりかけている。
それはいい事のはずなのに、やはり胸騒ぎがする。
その事が気になって、仕事が思うように進まない。
少し、複雑な気持ちになった。
***
私はいつものように仕事をこなし、その帰り道だった。
今日が異常に仕事が速く進んで自分でも驚くほど。
このまま帰るのはもったいないと思い、私は近くのコンビニへ入った。
まず雑誌を手に取って、目線を本へ向ける。
パラパラとページをめくり、最後のページまでめくり終わると、私は店内を見渡してみた。
――岡田……さん?
私は思わず後ろに後ずさった。
せっかくだから声をかけようかと思ったその時、とんでもない光景を目にしてしまったのだ。
岡田さんは周りを見渡してから近くにあった商品を2つほどカバンに詰め込み、店内を後にした。
――万引き。
そう分かった私は岡田さんを迷わず追いかけ、逃げようとする岡田さんの腕を掴んだ。
「三浦さん、邪魔なんですよ! 離してください!!」
そう言って必死に振りほどこうとする岡田さん。
でも、私は離さない。離すわけがない。
「岡田さん……今、自分がしたこと分かってます?」
「……見てたんですか」
諦めたように言い、岡田さんは俯いた。
「どうしてこんな事したんですか?」
私は岡田さんの腕を掴むのを止め、聞いた。
「それ……は……」
岡田さんは顔をあげようとしない。
ずっと俯いたまま。
「顔をあげてください」
私が言うと、岡田さんは顔をあげて、少しためらったようだが話し始めた。
「……私は、結婚しています。子供もいます」
黙って私は岡田さんの言葉に耳を傾けた。
「姑も、います」

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