花言葉の約束  空花 /作



【21】



―私は本当に友達が欲しかった。

たった一人でもいい。

私と仲良くしてくれる友達……。


「ごめんっ……友達なんて、全然いなかったから……すごく、嬉しくて」

私は泣きながら言った。

その子は、私が泣き止むまでさっきと同じようにずっと背中をなでてくれていた。


最初は本当に泣いてたけれど、いつの間にか私の泣き顔は、笑顔になっていた。

私は涙を拭いて立ち上がった。


そして、その子にお礼を言った。

「えっと、その……色々ありがとうございました」

私は軽く頭を下げた。

「いやいや、そんなお礼言うほどでもないって」

その子は笑顔で答える。

「そう……ですか? それなら良かったんです……」

「敬語じゃなくていいよー友達だもんね!」

『友達』

私の友達。

まだ、名前も知らないけれど……

でも、大切な友達。


私が一番欲しかった存在。

たった一人でいいんだ。

話を聞いてくれる、友達――。

「そういえばまだ名前教えてなかったね! 琴音だよ、神崎琴音。……僕って言ってるけど女だよ」

その子は私の悲しみも辛さも全て包み込むような優しい笑顔で言った。

「琴音……?」

私は呟いた。

「うん、琴音だよ! キミの名前は?」

その子……いや、琴音は私に聞いた。

「三浦七海……」

私は答えた。

そうすると、琴音は手を差し出してきて、

「よろしくね、七海!」

と言った。

私は琴音に手を差し出し、握手した。

その手はとても暖かった。

……それから私は琴音といっぱい話をした。