花言葉の約束 空花 /作

【60】
優奈目線
「私は、お母さんの事なんか大嫌い。世界で一番って言える位」
静かにそう呟いた七海。
その目は、私しか見ていない。
「七海……」
「いつも虐待されてた私の気持ち、考えたことある!? 私のことなんて、どうでもいいの!?」
「違う、どうでもよくなんか……」
どうでもよくなんかない、そう言おうとした瞬間。
「じゃあ何で私にあんな事したの!!」
声を荒げて七海は言う。
ストレス発散の為に虐待したなんて、面と向かって言えるはず無かった。
でも、嘘はつけなかった。
「ストレス、発散、する為……」
思わず言葉が途切れ途切れになる。
言って……しまった。
「私は、お母さんの人形じゃない!!」
「お母さんが全部悪かったの……! 七海、本当に……ごめんね」
慌てて私は謝ったけれども、それで許されるはずは無かった。
七海目線
「お母さん」
琴音は黙って私達を見ている。
「私は、お母さんの事なんか大嫌い。世界で一番って言える位」
私は静かにそう呟いた。
「七海……」
「いつも虐待されてた私の気持ち、考えたことある!? 私のことなんて、どうでもいいの!?」
「違う、どうでもよくなんか……」
どうでもよくなんかない、そう言いかけたお母さんを遮って私は声を荒げた。
「じゃあ何で私にあんな事したの!!」
お母さんの答えは……何?
「ストレス、発散、する為……」
途切れ途切れにお母さんは答えた。
その"答え"は、"私の事なんかどうでもいい"と言っているように聞こえた。
嘘つき。全て、言い訳だったんじゃないか。
"どうでもよくなんかない"
なんて。
「私は、お母さんの人形じゃない!!」
「お母さんが全部悪かったの……! 七海、本当に……ごめんね」
謝れば、許されるとでも思ってるのか。
それくらいの言葉で許せるならこんなに苦しんでない。

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