花言葉の約束  空花 /作



【19】



「ゲホッ……っ……ゲホゲホッ……うっ……」

「大丈夫!?」

『誰か』は私の背中を私が落ち着くまでなでていてくれた。

私はやっと落ち着いて、そしてやっと気付いた。

この子が私の自.殺を止めた事に。

さっき、この子は紐をちぎったんだ。

だから私は落ちた。

「……お願い、死.なせて!! 死.にたい! 死.なせてよ!!」

我に返った私は叫んだ。

「死.んじゃダメだよ! キミが死.んだら悲しむ人が居るのに!!」

私が死.んだら悲しむ人……?

「そんなの、いない!! お母さんは私の事を嫌いだし、お父さんはもうこの世にはいない。友達も居ない! どうして私の自.殺 を止めたんだよ!! 止めなくて良かったのに!」

「何でって……」



私にはいないはず。

私が死.んだら悲しむ人なんて。

なのに、どうして止めたんだよ。


「……僕は、悲しむから。キミが死んだら……っ」


「どうして……?」

たとえ嘘だとしても、私は嬉しかった。

だけど……簡単に、信じられる訳ない。

好きだったお父さんが事故で亡くなって、お母さんに裏切られて。

「え……どうしてって?」

その子は首を傾げた。

「どうして、どうして、そんな事が言えるの……? 何で、名前も何も知らない私なんかに、そんな事が言えるの!?」

「……確かに、僕はキミの名前も何も知らない。だけど……」

その子は、少し震えた声で言った。

私は、だけど……の先の言葉を聞くのが少し怖かった。

その先に、深い意味がありそうで。

「僕は……僕は! もう、これ以上心が淋しい人も、それに傷ついて自.殺する人も増やしたくない!! だからキミを止めた!!」


……ただ、言っただけではなかったの?

私が死.んだら悲しむ人が居るなんて嘘みたい。

でもまだ信じられない。

ねえ、本当に、そう思ってる……?