花言葉の約束  空花 /作



【30】



その後、私はずっとそこに立ち尽くしていた。

――夢。

みたいだった……


風のように現れて、風のように去った琴音。

琴音の言葉に私はすごく励まされた。

また私は、あの家に戻る。


でも、もう怖くない。

きっと、大丈夫。


そう、琴音が教えてくれたから。


琴音にまた会えるはずだから。


***


私は家に向かって一歩一歩歩き出した。

もう怖くなんかない。

まだ、虐待になんて負けないから。


強くなる。


私は元来た道を思い出して、走り始めた。

街にはあまり人はいない。


私はまた石につまずきそうになったけど、自力で持ち直した。

そしてまた走り出す。

『花言葉の約束』を忘れずに。

しばらく走って、やっとマンションの入り口まで来た。

――ギイッ

私はマンションの扉を開けて、中に入った。