花言葉の約束 空花 /作

【22】
雨の雫が風に乗って空を舞う。
……その夜は、本当に幸せな夜だった。
いつもはとても冷たく、寂しい雨が、いつもはとても寒くて暗い夜が、 今日はとても暖かくて、まるで私達を優しく見守っているような――。
そんな、夜。
「……何で七海は自.殺なんて、しようと思ったの?」
琴音がちょっと遠慮しながらそんな事を聞いた。
私は全て話した。
お母さんの事。
虐待の事。
人が怖かった事。
琴音になら、全てを打ち明けられる。
他の人は怖くても琴音になら心を開ける……
心からそう思った。
*
「……虐待、か」
琴音は呟くように言った。
虐待……
『あの事』だけは今でも忘れない。
『あの事』が起きなければ、私は今……
(※七海の回想シーンに入ります)
交通事故。
家族でドライブしていた帰り道。
居眠り運転していた車と衝突した。
そして、お父さんは――
亡くなった。
「全力は尽くしたのですが……」
そのお医者さんの一言で、お母さんは泣いた。
涙が枯れそうなほど、泣いていた
幼かった私は、何が起きたか分からなかった。
何度もお母さんに尋ねた。
「なんで、おとうさんはあかくなって、きゅうにいなくなっちゃったの?」
お母さんは、一回しか答えてくれなかった。
「……お父さんは、お星様になったのよ」
それしか言ってくれなかった。

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