花言葉の約束  空花 /作



【22】



雨の雫が風に乗って空を舞う。


……その夜は、本当に幸せな夜だった。

いつもはとても冷たく、寂しい雨が、いつもはとても寒くて暗い夜が、 今日はとても暖かくて、まるで私達を優しく見守っているような――。

そんな、夜。


「……何で七海は自.殺なんて、しようと思ったの?」

琴音がちょっと遠慮しながらそんな事を聞いた。

私は全て話した。

お母さんの事。 

虐待の事。

人が怖かった事。

琴音になら、全てを打ち明けられる。

他の人は怖くても琴音になら心を開ける……

心からそう思った。


「……虐待、か」

琴音は呟くように言った。

虐待……


『あの事』だけは今でも忘れない。

『あの事』が起きなければ、私は今……

(※七海の回想シーンに入ります)

交通事故。

家族でドライブしていた帰り道。


居眠り運転していた車と衝突した。

そして、お父さんは――

亡くなった。


「全力は尽くしたのですが……」

そのお医者さんの一言で、お母さんは泣いた。

涙が枯れそうなほど、泣いていた

幼かった私は、何が起きたか分からなかった。

何度もお母さんに尋ねた。

「なんで、おとうさんはあかくなって、きゅうにいなくなっちゃったの?」

お母さんは、一回しか答えてくれなかった。

「……お父さんは、お星様になったのよ」

それしか言ってくれなかった。