花言葉の約束 空花 /作

【23】
(※まだ七海の回想シーンです)
……その日から数日後。
家でお母さんは悲しい目をしながら料理を作っていた。
お父さんが大好きだったグラタンを……。
テーブルの上にはグラタンが1つ多く乗せられていた。
私が「ひとつおおいよ?」と言うと、
お母さんは「お父さんの分よ……」と言った。
私はそれ以上尋ねなかった。
お父さんのいない食卓は、すごく寂しかった。
「……お父さんは、お星様になったのよ」
その意味が分からなかった私も、
心にぽっかり穴が開いた。
――そして、その日の夜。
私は夜中、トイレに行きたくて起きた。
そして、電気をつけた。
誰も居ないと思っていたけれど、お母さんが居た。
お母さんは静かに泣いていた。
私はまだ幼かったので、何で泣いているか分からなかった。
「おかあさん? いたいところあるの? どうしてないてるの?」
そう、私は聞いた。
お母さんは何も答えずただただ泣いていた。
「おかあさんなかないで……ななみもかなしくなるよ……」
今思えば、お母さんにとって、私の言葉は「うるさいただの子供の言葉」だったんだろう。
だけど、お母さんは怒ることもなく、
ただ、
泣いていた。
それだけだった。

PR
小説大会受賞作品
スポンサード リンク